週末に実家で夕食をともにすると、父は食べ終わるとすぐ、こたつでごろりと横になる。しばらくすると胸のあたりをさすりながら「なんだか、じりじりするんだよな」。夜中には、寝室から咳きこむ声が聞こえてくる。
「食べすぎただけだろう」と、気にしないままになっていませんか?
胸やけや、すっぱいものがこみあげてくる感じは、逆流性食道炎のサインであることがあります。食事のとり方や姿勢など、暮らしの中で気をつけられることも多い病気です。
この記事では、逆流性食道炎の基本と、ご家族が気づきたいサイン、食事や寝る姿勢の工夫についてご紹介します。
逆流性食道炎とは?
食べた物は、のどから食道を通って胃に送られます。胃と食道のつなぎ目には、胃酸が食道へ戻らないようにするはたらきがあります。このはたらきが弱まったり、おなかに圧がかかったりすると、胃酸などの胃の中身が食道へ逆流し、食道の粘膜がただれる(炎症が起きる)ことがあります。これが逆流性食道炎です。胃酸の逆流によって胸やけなどが起こる病気をまとめて「胃食道逆流症(GERD)」と呼び、そのうち食道の粘膜にただれがあるものを逆流性食道炎といいます。
参考:患者さんとご家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイド2023(一般財団法人日本消化器病学会・PDF)
主な症状と、家族が気づきたいサイン
代表的な症状は、胸やけ(胸のあたりが焼けるような感じ)と、すっぱいものや苦いものが口までこみあげてくる感じです。このほか、次のような変化が見られることもあります。
- 食後や横になったときに、胸のあたりをさする・不快そうにする
- のどの違和感を訴える
- 咳が長く続く、夜に咳きこむ
- 胃のムカムカや重い感じを訴える
- 食事を楽しめていない、夜ぐっすり眠れていない様子がある
高齢の方は、不快な感じをうまく言葉にできなかったり、「年のせい」と我慢したりすることがあります。どれも別の原因で起こることもあるため、これだけで判断はできませんが、「食後に様子が変わる」「夜に咳が出る」といった変化が続くときは、かかりつけ医に伝えてください。
胸の痛みは自己判断しない
胸のあたりの痛みや不快感は、心臓の病気など、別の病気で起こることもあります。「いつもの胸やけ」と決めつけず、冷や汗をかく、息苦しい、痛みが強い・長く続くといったときは、すぐに医療機関に相談しましょう。心臓の病気については「心疾患の危険因子や予防について」でも解説しています。
高齢の方に起こりやすい背景
逆流性食道炎には、年齢による変化や生活習慣など、いくつかの要因が関わるとされています。高齢の方の暮らしの中では、たとえば次のような点が挙げられます。
- 背中が丸くなった姿勢:おなかが圧迫され、胃の中身が戻りやすくなる。背骨の骨折などで背中が丸くなることもあります(骨粗鬆症について)
- 食後すぐに横になる習慣
- 食べすぎ、脂っこい食事
- ベルトなどでおなかを締めつける、重い物を持つ、前かがみの姿勢:おなかに圧がかかる
- 甘いもの、アルコール、コーヒー、炭酸飲料、柑橘類など:人によって症状のきっかけになることがある
食事と姿勢の工夫
逆流性食道炎の治療は、医師の診断にもとづいて、薬と生活習慣の見直しを組み合わせて行われるのが一般的です。ご家族が日頃から気を配れることには、次のようなものがあります。どれも症状をなくす方法ではなく、暮らしの中でできる工夫として取り入れてください。
- 食後すぐに横にならない:食べ終わったらしばらくは椅子に座って過ごす。こたつやソファでの「ごろ寝」は、少し時間をおいてから。
- 寝るときは上半身を少し高く:枕だけを高くするのではなく、背中から頭にかけてゆるやかに高くなるようにする。
- 夕食は寝る直前を避ける:夕食から寝るまでの時間をあけるようにする。
- 量は「腹八分」、脂っこいものは控えめに:一度にたくさん食べるより、量を控えめにする。
- おなかを締めつけない服装:きついベルトやゴムの強いズボンは避ける。
- 前かがみの作業を続けない:草取りや床の拭き掃除など、かがむ姿勢が長く続く家事は、食後すぐは避ける。
市販の胃薬を続けて使う前には、ほかに飲んでいる薬との組み合わせも含めて、医師や薬剤師に相談しましょう。食事のバランスについては「健康を維持するために高齢者の食事で気をつけること」もご参考にしてください。
早めに医療機関に相談したいサイン
胸やけの症状が続く場合は、自己判断で様子を見続けず、かかりつけ医に相談しましょう。特に次のような様子があるときは、ほかの病気が隠れていないか確かめるためにも、早めの受診をおすすめします。
- 食べ物が飲み込みにくい、つかえる感じが続く
- 黒っぽい便が出る、吐いたものに血が混じる
- 市販薬を使っても症状が続く、くり返す
検査や治療の内容は、医師の判断に従いましょう。受診のときは「いつ、どんなときに症状が出るか」「食後どのくらいで横になっているか」などをメモしておくと、様子を伝えやすくなります。
まとめ/食卓のそばにいる家族だから気づけること
逆流性食道炎は、胃の中身が食道へ逆流して炎症が起きる病気で、食後すぐに横になる習慣や背中の丸い姿勢など、暮らしの中の要因が関わるとされています。食後の様子や夜中の咳は、一緒に食卓を囲むご家族だからこそ気づけるサインです。気になる変化があれば、かかりつけ医に相談しましょう。
まずは、かかりつけ医の受診をすすめてみることが次の一歩です。そのうえで、週末にしか会えない、ふだんの食事や夜の様子が分からないといった、離れて暮らす親の毎日について気になることがあれば、地域の相談窓口に話してみることもできます。「食後すぐ横になってしまう」「夜の咳が心配」といった様子を、そのまま伝えてみてください。
離れて暮らす親の毎日が気になったら
社会福祉法人大石ケ原会の「大石原苑介護支援センター・南吉成地域包括支援センター」(仙台市青葉区)では、ご家族からの介護の困りごとのご相談をお受けしています。週末にしか会えない親の暮らしぶりを、これからどう気にかけていけばいいかなど、今の様子を伝えるところから聞いてみてください。
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