高齢者の食事で気をつけたい誤嚥(ごえん)とその対処について

誤嚥について
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誤嚥性肺炎とは

最近、報道などで肺炎について耳にすることが多いと思います。それもそのはず、80歳以上の高齢者の死因第1位は肺炎なのです。とりわけその中の約30%は要介護の方の「誤嚥性肺炎」が占めております。

高齢者にとって特に危険が大きい誤嚥性肺炎。これは毎日の食事から起こりうる疾病であり、とても身近なところに危険が潜んでいます。ここでは「誤嚥」とは何か?肺炎に至る原因、その症状を学んでいきましょう。

誤嚥とは?

誤嚥(ごえん)は読んで字のごとく「誤って飲み込む」ことを意味します。本来、口から摂取し、食道を通るものが間違って気管に入ってしまうことです。食べ物や飲み物だけでなく、唾液もそれに含まれます。

誤嚥性肺炎

誤嚥し、食道ではなく気管に入ってしまった場合、普通はむせて気管から排出しようとする「反射機能」が働きます。しかし、高齢者の場合、この機能が衰えることで気管に入り込んでしまった食物を排出できず、口腔・咽頭に含んだ細菌も共に吸引し、肺の中で菌が増殖して起きてしまう肺炎のことを意味します。

症状

誤嚥性肺炎には、以下のような典型的な症状があります。

・発熱
・激しい咳
・濃性痰(黄色い痰)
・呼吸苦
・肺雑音

この症状は風邪の症状と酷似していますので、風邪と間違えて診断されることもあります。高齢者にこのような症状がある場合は誤嚥性肺炎の可能性を考える必要があります。

  

危険因子

加齢だけでなく、誤嚥性肺炎には様々な危険因子が存在します。ここではこれまで報告されている危険因子を紹介します。

〇栄養不良
〇基礎疾患の存在(脳卒中、糖尿病、高血圧)
〇口腔ケアの不良
〇喫煙
〇多剤服用
〇虫歯
〇経管栄養

誤嚥しやすい食事と誤嚥しにくい食事

「むせ込み」は、誤嚥に対する反射です。つまり、むせ込みやすい食品はリスクが高く、逆にむせ込みにくい食品はリスクが低いことを意味します。ここではその代表例を提示したいと思います。

水、お茶、汁物などの液体
サラサラした液体でまとまらない。トロミをつけたり、ゼリー状にすると飲み込みやすくなります。

高野豆腐、雑炊、水分を多く含む果物
固形物と液体が混在。トロミをつけたり、ゼリー状にしたりペーストにすると飲み込みやすくなります。

砂糖、きな粉
粉状なため、喉に張りつく。粉を取り除く、水分と混ぜると飲み込みやすくなります。

ところてん、柑橘類、果汁、酢の物
酸味が喉を刺激。他の調味料や食材を混ぜて酸味を薄めたり、ゼリーやスムージーにすると改善します。

かまぼこ、ひき肉、野菜のみじん切り
食材がバラバラでまとまらない。トロミをつけたり、つなぎを利用してみるのも効果的です。

麺類
すするのが難しい、噛み切れない、麺つゆが液体のためまとまらない。麺を食べやすいように切り分けてから茹でたり、麺とつゆを分けて、とろみをつけると改善します。

カステラ、パン、ゆで卵、焼き芋など
パサパサした食感で喉につまりやすい。生クリームやマヨネーズ、ドレッシングを加えたり、牛乳やスープと一緒だと食べやすくなります。

誤嚥性肺炎予防

誤嚥性肺炎を防ぐためには、食事の内容を工夫することも大事ですが、併せて口の中の細菌を減らすこと、口の機能を鍛えていくことも重要です。ここでは誤嚥を防ぐために効果的な予防法を紹介したいと思います。

  • 歯磨き&舌磨き
    肺炎を予防するには口の中を清潔にすることがとても効果的です。口の中に細菌が増えてしまうと、肺炎の原因となる細菌だけではなくインフルエンザなどのウイルスも体内に侵入しやすくなります。

    特に意識したいのは「舌の汚れ」です。舌にウイルスが付着すると唾液や食べ物を通じて体内に侵入しやすくなるので注意が必要です。

    毎日の歯磨きに加えて「舌磨き」も行い、予防効果を高めましょう。
  • 口腔体操
    「口腔体操」とは舌や口周りの筋肉を動かしたり、ストレッチすることで口腔機能の低下に伴って発生する摂食・嚥下障害、そして構音障害をも予防することが出来る体操です。近年では介護保険サービスであるデイサービスセンターでもリハビリの一環として取り入れているところもあります。

    この体操は食事の前に行うのが一番良いタイミングとされています。口や頬の筋肉を動かすことで唾液を分泌しやすくするからです。代表的な体操法として「早口言葉」や「パタカラ体操」があります。もちろんこうしたことは毎日の地道な継続が大切です。

誤嚥の症状と対応方法

もし誤嚥した場合、どうしたら良いか迷ったり、焦ってしったりすることもあると思います。ここでは誤嚥と窒息の症状、そして対応方法を学んでいきましょう。

症状

典型的な誤嚥の症状としては、食べている途中に激しいむせ込みと咳が生じ呼吸困難になります。顔面が赤くなり、時にチアノーゼと呼ばれる紫色になります。重篤な場合、咳や声も出なくなり、首を手でつかむような形になったまま意識を失うこともあります。

対応方法

・指で掻き出す
口の中で溜まった異物が外から見えている場合にこの方法を用います。義歯がある場合は外し、指にガーゼやハンカチを巻いて異物を掻き出します。

・腹部圧迫法(ハイムリッヒ法)
お腹を急激に圧迫することで、胸・気管内の圧を上げて異物を強制的に排出する方法です。具体的には立たせるか座らせて、その背後に回って片手でげんこつを作り、相手のみぞおちに置きます。
相手を抱くように反対の手でげんこつを作った手首を握り、手首を握った手で弾みをつけながら勢いよくげんこつをみぞおちに押し付け、腹部を圧迫します。

・背部叩打
異物が固まったり、詰まったりしておらず口の中で動く場合が有効。座らせるか横向きになってもらって左右の肩甲骨の間を、手のひらの付け根で数回叩きます。

意識が無いなどの重篤な場合には迷わず救急車を要請しましょう。

さて、今回は誤嚥性肺炎についてご説明しました。毎日のこと、当たり前の日常の中に高齢者にとって命に関わる危険が存在しています。万が一、こうした事故が起きた場合を想定して情報を取り入れていくことも大切かと思います。また「予防」のための知識を習得し、日頃から実践していくこともリスクの軽減に繋がります。ぜひお試しをされることをお勧めいたします。

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