食事の「自助具」について

自助具
目次

「自立支援」の考え方

「自立支援」とは、可能な限り自らの意思や力で生活を続けられるようサポートすることを意味しています。
日本は、世界を見渡しても高齢化が著しく進んでいる国家であり、大きな課題にもなっています。皆さんも「独居高齢者」「老々介護」などの言葉を聞いたことがあるかもしれません。こうした問題に対処していくには、高齢者が自らの力を用いて身の回りのことを行えるように支援を行う「自立」へのサポートが重要となります。

寝たきりの原因は、単に病気やケガによって機能が低下するものではありません。過度な安静や意欲低下による活動・運動不足が主な原因とされています。つまり、逆に考えれば日常の生活に必要な動作を可能な限り自分で行うようにすることで機能の低下を防ぐことが期待できるのです。

介護施設では「栄養バランスの取れた食事をすること」「必要な水分をしっかり摂ること」またトイレで排泄を行ったり、歩行や運動を行うことを日常生活に必要な基本動作として捉え、介護を行っています。

「しっかり食べ、しっかり飲み、食べた分だけしっかり運動し、排泄する」これは高齢者に限らず老若男女だれでも理想とする生活サイクルと言えます。

まずは、介護される本人が何を望んでいるのか、どう生活していきたいのかを理解することが大切です。価値観を押し付けるのは決して良い結果を生みません。自身で選択し、自らが行おうとする気持ちを醸成する環境づくりが自立支援には欠かせない要素です。

自助具とは?

みなさんは「自助具」というものを聞いたことがありますか?
病気や障害、加齢による機能の低下を要因とする動作困難を補ってくれる道具のことを指します。

生活には食事・排泄・更衣・入浴のみならず、家事や余暇活動も含めて様々な活動がありますが、自助具は体の不自由な方の自立を助け、これら活動に必要な動作を補助する機能を持っています。

自助具の使用で、これまでできなかったことができるようになると、自分でできる喜びを感じられたり、もっとやってみようという意欲がわいてきたりします。
このように、自助具は「自立」へのサポートを担う重要な役割を果たす道具です。

   

食事に関する自助具の種類や選び方、手作りの例

ここでは食事に活用されている自助具の例を紹介します。
箸・スプーン・フォーク・食器・コップ…
これらは食事をする上で日常的に使用している道具です。しかし、麻痺などの障害により、箸やスプーンを持てなくなったり、食器を持ち上げることが難しくなったりする場合があります。
普段、当たり前のように行っている「食事」ですが、食物を口に運ぶまで複雑な動作を要します。
そのため、適切な自助具を活用することで、1人で食事ができるようになる場合があります。

箸(はし)

ばね箸

自助具の箸には
①末端部分がバネで繋がれた「ピンセットタイプ」
②取り外しが可能な「クリップタイプ」
の主に2種類が存在します。

【使用に適している人】
・手指の変形・握力の低下により箸でつまむのが難しい方
・食べ物を口に運ぶ途中で落とすことが多い方

【自宅で作成できる参考事例:バネ箸】
① 外径 120mm のビニールホースを 250mm~300mm の長さに切る。
② 板ばねを※図のようにペンチでUの字に曲げる。
③ 箸とビニールホースをシッカロールで滑りやすくする。
④ ビニールホースに箸を細い方から差し込む。
⑤ 曲げた板ばねを箸とビニールホースの間に差し込む。 
☆③はシッカロールの代わりに水などでも OK。
(出典)
北九州市立介護実習・普及センター 福祉用具プラザ北九州 手作り自助具 (kati.gr.jp)

スプーン・フォーク

スプーン・フォークの握る箇所が細いと操作がとてもしづらいです。逆に掴みやすくなると飛躍的に操作が楽になります。
握りやすいように、柄の部分がスポンジもしくはシリコンがになっている製品が多数開発され製品化されています。

【使用に適している人】
・握る力が弱く、従来のスプーンやフォークが持ちにくい方
・手首、肘、肩などの関節に障害があり、自由に動かしにくい方

【自宅で作成できる参考事例:太柄スプーン】
① 外径 180mm のビニールホースを 100mm の長さに切る。 
② ビニールホースに、20mm幅の切り込みをはさみで 2 本入れる。 
③ ビニールホースにスプーンを差し込む。
(出典)
北九州市立介護実習・普及センター 福祉用具プラザ北九州 手作り自助具 (kati.gr.jp)

食器

麻痺やリウマチによる手指の変形により、片手で食事をせざるを得ない方もいらっしゃいます。その場合の食器は片手でも扱いやすいものを選ぶ必要があります。

〇 食器のフチの部分が幅広い構造
〇 食器の内側が深く、段差がついているなど形に工夫がされている。
〇 片手で器を押さえられる構造
〇 スプーンが差し込みやすい構造
〇 平皿の場合は、安定感を重視
〇 滑りにくい素材が使用されている

 【使用に適している人】  
・片麻痺やリウマチにより片手で食事をする
・スプーンで食材をすくい難くなっている方

コップ

水分を適切に摂るにも食器が必要です。障害に応じて様々な工夫がされています。吸い口や内部に傾斜がついていたり、二重構造になっていたりと障害や目的に合わせた作りになってます。また寝たきりや口をあけにくい人にも対応できる「吸いのみ」「ストロー付きコップ」も存在します。

 【使用に適している人】
・頭と首を後部にそらしにくい方。
・肩や肘に痛みや障害があり、腕を動かしにくい方
・嚥下に障害があり、普通のコップだとむせやすい方

マット・トレー

食器を載せたトレーやテーブルが滑ると食事の動作に支障が出るだけでなく、熱い汁物をこぼしてしまったり危険も伴います。最近では表面に滑り止め加工されたマットやトレーも販売されており、これらを活用することで更に食事しやすくなります。

 【使用に適している人】
・片麻痺やリウマチなどで、片手で食器を押さえるのが困難な方

購入できる場所

これら食事に関する自助具は、介護用具を取り扱うお店で販売されていますが、近年ではドラッグストアで取り扱われていることもあります。またインターネット通販でも購入は可能です。ただし、これら食事に関する自助具は全て「介護保険適応外」となるのでご注意ください。

選ぶうえで大切なこと
自助具は各メーカーで様々な商品が開発されています。大切なのは自分に合ったものを選ぶことです。選んだ自助具を使うことで動作が楽になったり、食事への不安が減る、または痛みや疲労が無くなったなど、何らかの改善があれば「自分に合っている」と言えます。

迷った場合は、病院や福祉施設・機関の専門家に相談を行うのも良いでしょう。

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