押さえておきたい食事介助のポイントや手順について

食事介助
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食事介助とは?

介護の世界では食事・排泄・入浴に係る介助のことを「三大介助」と呼ばれています。

それは生活するうえで必ず必要であり、かつ日常的に行う必要性があるからです。その中でも食事は生命の維持に直結するものでありますから介助の中で最も上位に位置しています。

食事介助をひと言で表現すると「ひとりで食事が出来ない方へ介助すること」を意味します。介助を要する要因は様々ありますが、大きく分けると3つに分類されます。

①身体的な機能の衰え

歳を重ねると身体機能が衰え、ひとりでの食事が困難となります。筋力が衰えることで箸やスプーンを上手く扱えなくなったり、また視力の低下で食べ物の位置を正確に認識できなくなったりします。こうした身体機能の変化によって食事をする動作が困難となり、介助を必要とする場合があります。

②嚥下・咀嚼機能の低下

加齢による影響で、飲み込む力や噛む力も低下していきます。食べることに必要な力が弱くなってしまうことで食欲のみならず、意欲も低下してしまいます。これがさらに低下してしまうと、誤嚥や栄養失調などのリスクも招きます。

③認知機能低下

歳を重ねると、認知機能の低下も目立つようになります。認知症などの影響によって食べ物を認識できず、味覚や空腹感を感じづらくなる場合もあります。

食事は、人間が生きるのに欠かせない行動です。「食べる」という行為が難しくなったとしても介助を行うことによって栄養を摂ることが可能となり、生命の維持につながります。

また食べることは嚥下、咀嚼、味覚への刺激になり、それらの機能低下を防ぐことができます。食事は単に栄養を摂るだけでなく、楽しみでもあります。楽しい食事は気持ちも明るくさせ、日頃の生活・活動の意欲向上にもつながっていきます。

食事介助のポイント

食事の介助は、命の危険にも直接つながる行為です。適切な介助を行うには準備と事前の確認が重要となります。まず介助に必要な準備をしましょう。楽しく安全に食事をしてもらうために、準備はとても大切です。

1.体調のチェック

熱は無いか、呼吸は乱れてないか、覚醒しているか、呼吸は乱れてないかいつもと変わったところは無いかを確認してください。

2. 排泄

食事の前にトイレはすませておきましょう。食事中に尿意や便意が気になると食事に集中できなくなります。

3.手洗い

食事の前に手をきれいにしておきましょう。当然、介助する側も清潔にすることは必須になります。

4.姿勢

正しい姿勢は誤嚥を予防するためにも重要です。椅子、テーブルの高さも本人の体に合ったものを選び、食べやすい姿勢が取れるようにしましょう。ベッドの上で食事をする場合は、体や本人の希望に合わせてリクライニングを調節し、適切な角度にしましょう。

5.環境

騒がしかったり、汚れて異臭がある場所では落ち着いて食事は出来ません。常に清潔に配慮し、食事に集中できる環境作りに努めましょう。

6.口腔ケア・口腔体操

食事が始まる前にうがいや歯磨きを行って、口の中を清潔にしましょう。誤嚥した場合に体内に細菌が侵入することを防ぐ効果があります。また可能であれば口腔体操をするのも唾液の分泌を促し、むせ込みを防ぐことが期待できます。

7.声かけ

視覚や嗅覚、味覚が衰えることによって、何を食べているか理解できていない方もいらっしゃいます。それでは食事を摂る楽しみも半減してしまいます。食欲が少しでも湧くように、メニューをイメージしやすいよう具体的な説明を心がけましょう。また、しっかり覚醒しているかも声をかけて確認してください。

食事介助の手順

ここからは、介助する側の立場になった注意点を説明します。

1、同じ目線になるよう隣に座る
立ったままの介助は相手に威圧感を与えてしまいます。また上からの介助だと自然に相手のアゴが上がりやすくなって飲み込みづらくなり、誤嚥の原因になります。同じ目線となるように隣か、斜め前あたりに座るようにしましょう。

2、食事前に水分を摂る
飲み込みをスムーズにするために、まずはお茶や水などで口の中を潤しましょう。

3、順番に配慮する
水分を多く含むものが食べやすいので最初はそれで慣れてもらいましょう。主食・副食・水分と交互にバランス良く摂取することが大切です。
一口の量はティースプーン1杯分程度が目安となります。相手のアゴが上がらな いように、やや下から運び入れ、口の奥まで入れないよう注意してください。

4、食後のケア
食後は何をどれだけ食べれたか記録を残した方が良いでしょう。お薬もひとりで飲めない場合には介助を行い、口の中に残渣物がないか確認をします。 歯磨きや入れ歯の洗浄も行い、口腔内の清潔に心がけましょう。食事直後は食べたものが逆流しやすくなります。食後はしばらく横にならないようにします。

難しいときの対応方法

環境に配慮し、様々な介助方法を行っても対応が難しい場合があります。その時は無理に食べさせようとはせず、原因を見つけることが大切です。

高齢者が食欲不振になる原因の主なものとして体と精神の病気の2種類が考えられます。風邪やインフルエンザ、胃炎や潰瘍などの消化器官の病気、心不全、癌などの体の病気。また、うつ病や精神的な病がそれに当たります。

原因が病気以外である場合もあり、例えば「老化・ストレス・認知症・嚥下障害・内臓の機能低下・薬の副作用・口腔状態・味覚、嗅覚、視覚の低下・不規則な生活習慣」こうした可能性も否定できません。

食欲不振がみられた場合には、その始まった時期、服用している薬、体の状態を詳しく調べたうえで医療機関に受診し、医師に相談することをお勧めします。

食事をしっかり摂ってもらうには、様々な対策が必要です。柔らかく、一口で食べられるように加工する。また彩りや配置を工夫、賑やかな環境づくり、好物の提供、これまでの生活習慣に合わせた食事時間の設定。

選択肢は無数にあると言えます。ここで大切なのは、病歴や嗜好、生活のスタイルを事前に把握することです。併せて、その時の感情や意向に沿うことも重要となります。  

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