知っておきたい高齢者の排泄について

高齢者の排泄について
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排泄のメカニズム

高齢者の介護には食事や更衣、入浴等々、様々な介助分類がありますが、その代表的なものに「排泄」があります。一言「排泄」と言っても、その方の有する機能によってはトイレを使える方、またはおむつを使用する方など一人ひとり違います。ここではまず「排泄とは何か?」というメカニズムをはじめに紹介いたします。

《排尿》

〇尿を作り、体の中にある老廃物や余分な水分を体外に排出する。
〇尿はある一定量膀胱に溜められ、いっぱいになると脳に信号が送られ「尿を出したい」と感じる。(尿意)
〇尿を排出する準備ができると、脳からの信号で尿道が開き排出される。
〇成人の1回の排泄尿量は約200~400mL、1日の総量は1,000~2,000mL程度。
〇泌尿器(腎臓・尿管・膀胱・尿道)が関連する。

《排便》

〇食物を胃で分解し、小腸で栄養を吸収、「不用物」が大腸に送られ固形の便を作り肛門から排出される。
〇食事を摂取してから排泄されるまでの時間は24時間から48時間となっている。
〇平均的な便の量は、1日150~200g程度。
〇消化器(主に胃・小腸・大腸等)が関連する。

高齢者の排泄に係る身体的要因

年齢を重ねると、これまで当たり前に行えていたことが出来なくなったり「衰え」を感じることがあります。排泄もそのひとつで膀胱の萎縮・弾力性の衰え、膀胱支配神経の不安定、膀胱内圧の異常、骨盤底の衰え、尿道の狭窄によって失禁しやすくなります。

こうした様々な要因はありますが、「失禁」は年齢を重ねれば誰しもが起こりうる自然な現象と受け止めることが大切と言えるでしょう。

高齢者の排泄に係る精神的要因

腸の働きが低下すると、肥満や生活習慣病、便秘、下痢、免疫の低下を引き起こしやすくなります。特に「便秘」は高齢者の排泄問題の上位を占めています。

何日もお通じが無い、ようやく出たけれども固くて小さい。すっきり出ない日々は本当につらいもので、便秘が続くと体だけでなく心にも様々な症状をもたらします。

アメリカの医療機関では、便秘のある人は無い人と比べて15年後の生存率が低いという研究結果を出しています。このように便秘は寿命を縮めてしまうことが明らかとなってきました。また腹痛や腹部膨満感、食欲低下は生活の質の低下を招き、心筋梗塞や脳卒中、寝たきりなどのリスクも高まると言われています。

便秘で困ること

  • 自律神経の働きが乱れる

自律神経の乱れも便秘の原因となりますが、逆に便秘をしていることがストレスになり、腸内環境が悪化して自律神経のバランスを崩します。

  • 腸内の悪玉菌を増加

腸の中に便が長く留まることで腐敗し、悪玉菌が増えます。悪玉菌は悪臭を伴う有害物質を作り出します。便秘になると便やおならが臭くなるのはこれが原因です。

失禁による精神的な影響

尿失禁・便失禁により、当事者は激しい羞恥心にさいなまれることが多くあります。
自己嫌悪に陥り、自律性の損失にも繋がり、それが閉じ籠りや非活動となり生活の質の低下を招く恐れがあります。

頻尿は精神的な影響が大きいと言われ、過去に失敗経験があると強い不安となり、頻尿を悪化させる要因と言われています。

排泄の自立を続けるためには

自身でトイレに行き、排泄することだけが自立ではありません。例えばパットを使用し、自分で交換できれば介護を必要としないわけで「自立」と言えるでしょう。また上げ下ろしのしやすい衣類や紙パンツを使用して排泄の動作をスムーズにする工夫も効果的です。

完全な自立を目指しても、高齢者に不安や苦痛を与えてしまうかもしれません。また無理をすることは介護の負担を増加させてしまうリスクもあります。

大切なことは、それぞれの「残存能力」に応じた自立を目指すことであり、ハードルを高くせず、段階的に目標のレベルを上げていくことで。

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