久しぶりに実家に帰ったら、お母さまの足首がぽってりむくんでいた。駅からの坂道で、お父さまが何度も立ち止まって息を整えていた――。
「年をとったから仕方ないのかな」と思いながらも、どこか気になっている方は多いのではないでしょうか。
心不全とは?
「心不全」とは、ひとつの病名というより、心臓のポンプの働きが弱まり、体に必要な血液を十分に送り出せなくなった「状態」のことを指します。
心臓は休むことなく全身へ血液を送り出し、酸素や栄養を届けています。そのポンプの力が落ちると、血液の流れが滞り、体のあちこちに水分がたまったり、息が苦しくなったりします。
心不全の背景には、心筋梗塞などの心臓の病気、高血圧、心臓の弁の病気、不整脈など、さまざまなものがあるとされています。年齢を重ねるほど心臓にも負担が積み重なるため、高齢の方にとって身近な病気のひとつです。
ところが高齢の方の場合、「最近疲れやすい」「歩くと息が上がる」といった変化を、ご本人もご家族も「年のせいかな」と見過ごしてしまいやすいのが難しいところです。この記事では、ご家族が気づきやすいサインと、日々の暮らしの中でできることをまとめました。
見逃しやすい心不全のサイン
心不全のサインは、ある日突然はっきり現れるとは限りません。少しずつ、日常の小さな変化として表れることが多いといわれています。
【体に表れやすい変化】
- 足のすねや足の甲がむくみ、指で押すとへこんだ跡が残る
- 短い期間で体重が増えた(食べる量は変わらないのに)
- 階段や坂道、着替えなど、以前は平気だった動作で息が切れる
- 夜、横になると息苦しく、枕を高くしたり座ったりすると楽になる
- 咳が続く、ゼーゼーという音がする
【暮らしぶりに表れやすい変化】
- すぐに横になりたがる、日中もぼんやりしている
- 食欲が落ちた、お腹が張ると言う
- 散歩や買い物など、好きだった外出を避けるようになった
- 夜中にトイレに起きる回数が増えた
特にむくみ(浮腫)は、心不全に気づくきっかけになることがあります。これまで無かったむくみが出てきた、靴下の跡がくっきり残るようになった、という変化は見過ごさないようにしたいところです。国立循環器病研究センターも、息切れや足のむくみは心不全の初期によく見られる症状として、こうした症状が出たときは一度医療機関を受診するよう勧めています。
参考:心不全|循環器病について知る(国立循環器病研究センター)
ただし、これらの変化は心不全以外の原因でも起こります。ご家族が「心不全かどうか」を判断する必要はありません。「いつもと違う」と感じたら、かかりつけ医や医療機関に相談することが大切です。
こんなときは早めに医療機関へ
次のような様子が見られるときは、様子見をせずに、すぐに医療機関へ相談してください。症状が強い場合や判断に迷う場合は、救急への連絡もためらわないでください。
- 安静にしていても息が苦しい、横になれないほど苦しい
- 胸の痛みや締めつけられる感じがある
- 唇や指先の色が悪い、冷や汗をかいている
- 呼びかけへの反応がいつもより鈍い
受診の要否や治療の内容は、医師の判断に従ってください。この記事は、ご家族が変化に気づくための目安をお伝えするものです。
家族ができること|毎日の「小さな記録」
心不全と診断された方の暮らしでは、日々の小さな変化に気づけるかどうかがとても大切になります。ご家族にできることとして、次のような工夫があります。
体重とむくみを、同じ条件で確認する
体重は、体にたまった水分の変化を知る手がかりのひとつです。毎朝トイレを済ませた後など、できるだけ同じタイミングで測り、ノートやカレンダーに書き留めておくと、変化に気づきやすくなります。足のむくみも、あわせて見ておくとよいでしょう。どのくらいの変化で連絡すべきかは、主治医にあらかじめ確認しておくと安心です。
食事・水分・お薬は、医師の指示を一緒に守る
心不全の方は、塩分や水分の量について医師から指示を受けることがあります。ただ、必要な量は一人ひとり異なるため、自己判断で水分を極端に減らしたり、お薬を止めたりしないことが大切です。お薬の飲み忘れを防ぐために、お薬カレンダーなどを活用するのもひとつの方法です。
「疲れた」「苦しい」を言いやすい雰囲気をつくる
高齢の方は、家族に心配をかけまいと不調を隠してしまうことがあります。また、認知症のある方は、息苦しさやだるさを言葉でうまく伝えられないこともあります。表情や動き、食事の量、眠り方など、言葉以外の変化にも目を向けてあげてください。受診のときにこうした記録を持っていくと、医師に様子を伝えやすくなります。
在宅での見守りに限界を感じたら
心不全は、良い時期と調子を崩す時期を繰り返しながら、長く付き合っていくことが多い病気だといわれています。毎日の体重測定、食事の管理、お薬の確認、夜間の様子の見守りを、ご家族だけで続けるのは簡単なことではありません。
離れて暮らしていて毎日様子を見られない、日中は仕事で家を空けてしまう、ご自身も高齢で見守りが負担になってきた――。そんなときは、訪問看護やデイサービスなどの介護サービスを組み合わせて、見守りの手を増やすことも考えられます。心臓の病気について詳しくは【心疾患】突然死の多くは心臓トラブル「危険因子や予防について解説」もあわせてご覧ください。
まとめ/「年のせい」で片づけず、まずは相談を
むくみ、息切れ、疲れやすさ。どれも年齢を重ねれば誰にでも起こりそうな変化だからこそ、心不全のサインは見過ごされやすいものです。「いつもと違う」と感じたご家族の気づきが、早めの受診につながります。気になる変化があれば、まずはかかりつけ医や医療機関へ相談してください。
そのうえで、「毎日の体重や服薬の確認を、離れていてどう続ければいいのだろう」「使える介護サービスはあるのだろうか」と迷ったら、介護の相談窓口を頼ってみてください。仙台市青葉区の大石原苑介護支援センター・南吉成地域包括支援センター(社会福祉法人大石ケ原会)では、介護についてわからないことを、ご家族からも幅広くご相談いただけます。見守りの手をどう増やすか、一緒に考えるところから始めましょう。
