浮腫(ふしゅ)とは?
「むくみ」これを医療用語で「浮腫(ふしゅ)」と言います。
椅子に座って長い時間仕事をしていると、夕方位に足がむくんでしまうことはありませんか?
経験されたことがある方も多いと思います。
細胞組織の液体と血液の圧力バランスが崩れ、細胞組織に水分が溜まって腫れてしまう。その結果、むくんでしまう状態が「浮腫」です。経験からお分かりかもしれませんが、主に下腿(足)に浮腫が発生しすることが多いです。これは、重力の関係で体の下の方に水分が溜まりやすい特徴があるからです。
高齢で介護が必要となり、寝たきりになっている方の場合は常に同じ姿勢でいるため浮腫が発生するリスクが高くなります。下半身だけでなく顔や背中にも現れやすい状態です。介護を行っていく中で、浮腫の確認は健康状態を把握するのに重要な対応のひとつですので、当記事で詳しく触れてみたいと思います。
浮腫のメカニズム
人間の体には「動脈」と「静脈」という2つの血管の他に「リンパ管」という管も全身に張り巡らされています。
心臓は血液を全身に送り出すポンプの役割があり、心臓から送り出された血液は動脈を通って体の隅々に届けられます。
血液の中には酸素や栄養が含まれており、これらを全身に届けます。
同時に二酸化炭素や老廃物を回収し、静脈を通って心臓に戻るというサイクルを繰り返しています。
血液の他に「リンパ管」でも二酸化炭素や老廃物の回収が行われています。
この時、「静脈」の働きが悪いとリンパに送られる血しょう成分の量が増えてしまいます。静脈が詰まったり、リンパ液がスムーズに流れなったりすると余計な水分(血しょう成分)が体内に溜まってしまい、それが浮腫(むくみ)という形で現れてしまうのです。
浮腫の原因
浮腫が発生している場所によって「全身性浮腫」と「局所的浮腫」に分けられます。
【全身性浮腫の原因】
- うっ血性心不全などの「心性浮腫」
- ネフローゼ症候群、腎不全や腎炎に伴う「腎性浮腫」
- 肝硬変、門脈圧亢進病などの「肝性浮腫」 ※腹水が伴うことが多い。
- 甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症などの「内分泌系浮腫」
- 食事量が低下し、血液中のたんぱく質が減少した状態の時に発生する「栄養障害性浮腫」
- 解熱鎮痛剤、降圧剤、経口避妊薬などの副作用として現れる「薬剤性浮腫」
- 妊娠に伴う浮腫
- 「突発性浮腫」原因不明であるが良性の浮腫。中年女性に多く発生し生理周期に伴う。
【局所性浮腫の原因】
- 上大静脈症候群、深部静脈血栓症などで発生する「静脈性浮腫」
- 癌や術後などに起こるリンパ管閉塞などの「リンパ管性浮腫」
- 火傷や日焼けなどで発生する「炎症性浮腫」
- 打撲、捻挫、骨折などで発生する「外傷性浮腫」
- 長期にわたる安静、活動低下によって発生する「廃用性浮腫」
浮腫の治療・予防・改善
まずは原因となる疾患の治療を行うことが大前提となりますが、その他にナトリウム(塩分)の制限、水分の制限、利尿剤の投与といった選択肢もあります。もし浮腫と思われる症状が現れた場合には医師に相談しましょう。
長い時間椅子に座った時に発生してしまうような、誰しもが経験する一時的な浮腫の解消を行う場合にはお風呂などで温めたり、マッサージをすることも効果的です。また同じ姿勢を取らず、こまめに体を動かすことも浮腫を発生させない解消法になります。
顔にむくみが出てしまった場合の対処法としては、冷水や温水を使用し、交互に洗顔を行うと血行良くなり、改善が期待できます。
その他、予防として適度に運動を行い筋肉量や基礎代謝量を上げる、食事改善でミネラルやビタミンをきちんと摂取するなどの方法があります。
浮腫が起きてしまったら?家族や介護者ができること
最も浮腫が発生しやすいとされている場所は「足」。足の浮腫は高齢者の中でも認知症に罹患されている方が酷くなる傾向があります。その理由としては浮腫から発生する不快感や苦痛を周囲に伝えることが難しいため、ひどい時には痺れを伴うまで悪化することもあります。そうなってしまうことを防ぐためにもご家族や介護をされる方の観察力がとても大切になります。
もし浮腫が発生した時には
- 1日に数回、時間を決めてクッションなどを活用して足を高く持ち上げる
- 寝る前に足浴をする
- 数分程度、簡単にふくらはぎを中心にマッサージをする
など、短い時間でも良いのでそれを日課として続けることが大切です。
特に高齢者の方は自分で出来ないことも多くなってきているので積極的に手伝ってあげてください。
こうしたマッサージや運動を行ってもなかなか浮腫が改善しない場合には、何かしらの病気が原因である可能性もあるので、後回しにせず医師に相談しましょう。
まとめ/浮腫から心不全が発見されたケースも
浮腫(むくみ)は老若男女、多くの人が経験するだけに見過ごしてしまう傾向があります。しかし、高齢者の方々の健康管理を行う中で浮腫が発生しているかどうかを確認することは重要な意味を持ちます。介護を必要とする高齢者は体調を崩しやすく、体温や血圧、脈拍を測定する他に、浮腫のような外見的変化が起きているのかを確認することも重要となります。
実際に先日まで無かった浮腫を発見し、病院で検査したところ心不全であったケースもありました。このことからも分かるように、日頃と違う変化を見つけて対処することによって最悪な状態になることを回避できます。改めてお体の再確認をすることをお勧め致します。