「高齢者がかかりやすい冬の感染症」予防や対策はできるの?

長きにわたった新型コロナウイルス感染症の流行は、私たちの生活のありようを大きく変化させました。ワクチンの開発、集団免疫の獲得によって日々の生活は普段通りに戻りつつありますが、根絶に至ったわけではありません。むしろこれまでに存在した感染症と同様に我々人類と長く付き合っていく新たな感染症のひとつに数えられるようになりました。

感染症の原因はウイルスや細菌です。これらは人間の目に見えない大変微小な存在です。しかし、そんな小さな存在でも感染・発症した場合は命を脅かす存在になり、時には社会構造さえ変化させる影響力を持つようになります。

私たち高齢者介護に携わる者の第一命題は「ご利用の方々の安全を守ること」です。それは介護を通じて事故の発生を防ぎ、安全を確保することに他なりません。もちろん感染症を予防することも最重要項目となっています。

今回紹介する記事は、これから寒くなる時期に発生しやすい感染症についてどうしたら予防できるのか?について解説します。

目次

高齢者は感染症にかかりやすいって本当?

本当です。歳を取ると免疫力が低下してしまうことが原因です。
加齢に伴い免疫を主導する白血球が減少してしまい、さらに、その成長を助ける脾臓やリンパ節の働きも低下してしまうのです。それによって体全体の免疫機能が低下していきます。免疫機能は60歳を過ぎると20代のおよそ半分以下になると言われていて、そのため高齢になると様々な病原体の影響を受けやすくなり、感染症になりやすくなります。

冬にかかりやすい感染症は?予防や対策は?

どうして冬は流行しやすいの?

感染症はウイルスや細菌が主な原因のため、季節に関係ないつでも発生しますが、特に、寒い「冬」に流行しやすくなります。ここではその理由を解説します。

  • 温度が低いこと
    ウイルスや細菌は低温や低湿度の環境を好みます。そのため夏よりも長く生存し、感染力が強くなります。
  • 空気が乾燥していること
    空気が乾燥していると、咳やくしゃみの飛沫が小さくなるため、より遠く、より広範囲にウイルスが飛ぶようになります。
  • 体温が下がること
    寒くなって体温が下がると、ウイルスや細菌に対する免疫力が落ちてしまいます。冬場は気温が下がることも影響して夏に比べて水分を摂る量も減ってしまう為、喉や気管支の粘膜が乾燥し、より感染しやすい状態になります。

冬に流行しやすい代表的な感染症

インフルエンザ

冬に流行する代表的な感染症です。感染の経路は飛沫感染と接触感染。症状としては38℃以上の高熱、頭痛、関節痛があります。風邪の症状と似ており鼻水、咳、喉の痛みもありますが、全身の倦怠感が伴うことが大きな特徴となります。高齢者の場合、肺炎を併発して重症化することも珍しくありません。

感染性胃腸炎(ノロウイルス)

細菌やウイルスなどの感染によって、嘔吐や下痢の症状が現れます。ウイルスが付着した食品を口にすることや、嘔吐した人の吐物から空中に浮遊したウイルスを吸い込むことで感染します。おおむね1~2日の潜伏期間を経て発症します。高齢者の場合、嘔吐したものを誤嚥して肺炎を合併するリスクが高いため注意が必要です。大変感染力が高く、ワクチンもありません。

RSウイルス

RSウイルスは保育園や幼稚園に通う子供がかかりやすいイメージがありますが、免疫力が低下している高齢者にとってもかかりやすい感染症です。子供と祖父母が同居している場合、面倒を見る機会が多い祖父母は接触の機会が多いため感染しやすくなる背景があります。

症状としては鼻水、くしゃみ、発熱、喉の痛みなど風邪と似ています。ただし、加齢や基礎疾患が原因で免疫力が低下している高齢者の場合、肺炎や気管支炎を起こして重症化する恐れがあるので、注意が必要な感染症です。

予防と対策を紹介

予防の例や対策に必要な物品について紹介します。

感染症感染経路予防の例予防に必要な物品






咳やくしゃみなどの飛沫から感染
感染者が使用した食器、タオル、ドアノブ等への接触感染
うがい
手洗い
手指の消毒
マスクの着用
マスク
眼鏡、ゴーグル
ビニールエプロン
フェイスシールド
手指消毒用石鹸
アルコール消毒剤
使い捨て手袋





会話、咳、くしゃみなどの飛沫から感染
コップやタオルなどの共有による接触感染
うがい
手洗い
手指の消毒
マスクの着用
子供たちが使用したおもちゃや触れた場所の消毒
マスク
手指消毒用石鹸
アルコール消毒剤












嘔吐物、便などから浮遊するウイルスによる飛沫感染
食器やタオルなどの共有による接触感染
空中に漂うウイルスを吸い込むことによる空気感染
ウイルスに汚染された食品を加熱不十分で食べた場合に起きる経口感染
こまめな手洗い (帰宅時、調理時、食事前、トイレ後等)
感染者を看病する場合、嘔吐物・便の処理の後には特に念入りに行うこと。
食品を十分に加熱 (85℃以上で1分以上加熱)
嘔吐や排泄で汚れた便器や床などを「次亜塩素酸ナトリウム液」で拭き取る。
マスク
眼鏡、ゴーグル
靴カバー
液体石鹸
ビニールエプロン
使い捨て手袋
ペーパータオル
次亜塩素酸ナトリウム液(濃度は0.5~1.0%)
ノロウイルスはアルコールによる消毒効果が弱いため、手指衛生には適していません。

重要なのは「感染しないこと」

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の経験によって、国民ひとりひとりの衛生意識が高まったことは事実です。手洗い、マスクの着用が日常の習慣となったことで毎年のように大流行していた季節性インフルエンザが殆んど発生しなかった時期もありました。このように集団での意識的な行動によって感染症の発生と流行を防ぐことが可能であると証明できた時代なのかもしれません。しかし、普段と同じ生活に戻りつつある今、これまでと同様に従来の感染症も流行することは間違いないでしょう。

高齢者にとって、感染症という病は時に命に関わります
まず重要なのは「感染しないこと」これに尽きると思います。
これから寒い時期を迎えますので、予防に努めてまいりましょう。

目次
閉じる