高齢者の「移乗の方法」を知りたい

在宅で介護を行う場合

  • 「このやり方で合っているのだろうか?」
  • 「ちょっと怖い・・」 
  • 「疲れる」
  • 「腰が痛くなってきた」 など

不安や負担を感じることがあるかと思います。
長く介護を続けていくと慣れることによって不安が解消することもあるでしょう。しかし、コツをつかむことによってもっと簡単に、そして楽に介助を行うことが可能になります。ここでは在宅で介護をされている方々のために、「移乗」の方法について紹介したいと思います。 

目次

「移乗」とは? 

    そもそも「移乗」とは、いったい何でしょうか?私たち福祉業界では日常的に使う介護用語ではありますが、ご家庭での介護では、この言葉はなじみがないかもしれません。 

    移乗とは、ベットから車椅子、車椅子からトイレの便座に移るなどの動作のことを言います。
    また、移乗介助とはこの動作をサポートをする介助方法のことを意味しています。 

    移乗は一見、簡単な動作に見えるかもしれません。しかし、足腰が不安定になっている方にとって、この動作をすることはとても大変で、それだけに介助する側にとっても大きな負担となります。そのため、移乗介助が腰痛の要因になってしまうことも少なくありません。また、支えきれずに落としてしまったり、一緒に転倒してしまったりして深刻な事故が発生することも多く、リスクが大きい介助と言えます。 

      

    移乗介助の3つポイント 

    移乗介助はいくつかのポイントを押さえると、介護を受けられる方だけでなく、介助する側にとっても負担を少なくするメリットがあります。ここでは3つの重要なポイントを紹介します。 

    ポイント① 前かがみにならない

    これは移乗に限らず、介護全般の動作にとっても共通ですが、移乗介助は特に腰への負担が大きな動作です。腰痛対策の基本として前かがみの長時間作業を行わないことが原則です。例えばベッドに寝ている方を介助する場合は、ベッドを高くして前かがみにならないような設定が効果的です。

    ポイント② 福祉用具の活用

    介護保険サービスには介護用ベッドや手すりなど、介護される側、する側双方にとって動作をスムーズにする効果を生み出す福祉用具が多数存在します。例えば介護用ベッドなどは、ベッド自体の高さや上半身の角度などを調整できる機能があるため、介助の動作負担を減らす効果があります。これらは設置や操作が必要なので、一見手間が増え、大変だと感じるかもしれませんが、明らかに負担が減少します。用具を活用することで楽に、そして安全に移乗を行うことが期待できます。

    ポイント③ 介護を受ける人の力も活用する


    「残存機能の活用」という言葉があります。要介護状態になった方でも「つかむ」「腰をあげる」「膝に力を入れる」など、何かしらの協力動作を行うことができます。介護を受ける方が持っている力を使えば、介護する側の負担も減ります。例えば首に手をまわして貰い、足も踏ん張って貰えば介助者にかかる重さも飛躍的に減少しますので負担も少なくなります。
     


     

    移乗の手順

    ここではベッドから車椅子への移乗の手順を解説します。 

    ①環境を整える

    ベッドよりも車椅子が高い場合、持ち上げる力がより必要になってしまうので負担が増えます。ベッドは車椅子の座面よりも高い位置に調整しましょう。
    車椅子のひじ掛けや足置きは外して、ベッドの横に車椅子を寄せます。位置としてはベッドに対して斜め30度くらいに設定すると動作が取りやすくなります。

    ②ベッドに浅く座る

    ベッドの端に浅く座って足をしっかり床につけてもらうようにします。そうすると介護される側も足に力が入り、お尻が浮きやすくなって立ち上がりの動作がスムーズになります。ただし、姿勢が保ちにくく、崩れやすい方の場合は浅く座ることが危険な場合がありますので、注意が必要です
     

    ③ベッドから落ちない様に支える

    介護する方は両足を開いて腰を落として立ち、車椅子を置く方に近い足を介護される方の膝に当ててブロックします。同時に片方の手で背中や肩を後ろから支え、座位が保てるようにしましょう。

    ④前傾姿勢にする

    車椅子へ移る前に、脇や背中に手を入れて前かがみにさせることで重心をベッドから足に移します。この段階を踏むと格段に移乗がしやすくなります

    ⑤膝が折れない様にサポートして車椅子に移す

    前傾姿勢を保ってもらったままスライドするように移乗します。ここで注意すべきは突然の「膝折れ」。膝がガクッと折れてしまわないように膝を当ててサポートしましょう

    ⑥車椅子に深く座る

    車椅子へ移乗した後は、外した肘当てを戻して深く正しい姿勢で座れるように整えましょう。具体的には背もたれと隙間が発生しない様に、お尻の位置を整える必要があります。どうしても姿勢が傾いてしまう場合にはクッションなどを挟んで調節しましょう。

    おわりに 

    今回は、在宅で行う移乗について紹介しました。この介助はその動作自体は時間がかからず、慣れてくると瞬時にできる介助であります。しかし、食事やトイレ、更衣、入浴等々、生活行動の全ての「始まり」に必要となる動作であるため、繰り返し必要な介助です。これを力任せに無理に行うと腰を痛める原因になり、時に在宅での介護を続けること自体が難しくなる恐れもあります。今回紹介したポイントを参考にしていただき、出来るだけ負担を減らして無理のない在宅介護を行っていきましょう。 

    目次
    閉じる