せん妄とは
せん妄とは一時的に意識障害や認知機能の低下が起こり混乱状態になることです。これは病気ではなく、意識障害のひとつで、周囲の状況がわからなくなったり、幻覚・幻聴・妄想などの症状をきたし、様々なタイプの「混乱状態」を総称する言葉として一般的に使用されています。興奮状態になり大声をあげたり、暴力をふるうこともあり、高齢者の場合だと認知症と間違われることがありますが、誰しもに起こりうることなので決して「せん妄=認知症」ではないということを認識しておきましょう。
せん妄の原因
せん妄の原因は何かしらの原疾患(もともと罹患している病気)や薬が脳に影響した場合に起こります。具体的に脳のどの部分が悪くなり発生するのかはまだ解明されていないのが現状です。すべての全身疾患がせん妄の「引き金」となりえ、原疾患に加えて多くの環境要因や身体要因が組み合わさって症状が出ます。
主な原因としてあげられる3つの因子
準備因子
加齢・認知症・脳血管障害などにより生じる認知機能の低下
- 加齢
- 認知症
- 脳卒中、パーキンソン病、脳神経の変性などの脳機能の障害
直接因子
病気や薬の影響によるもの
- 排便、排尿などの障害(便秘や尿路感染症も含む)
- 抗うつ薬、抗不安薬などの脳に影響を与える薬の副作用
- ガン末期の症状
- アルコールの影響
促進因子
睡眠の障害や環境変化等の精神的ストレスによるもの
- 睡眠障害
- 入院、転室
- 不安
- ストレス
- 環境の変化
※原因を特定できない場合もあります。
症状
症状が似ているため認知症と混同されることもありますが、異なる病気です。ただし認知症と併存する場合が多くみられます。認知症は一度発生してしまうと認知機能が戻らず進行していきますが、せん妄は一時的な症状のため、せん妄に対する治療や原疾患が治ることで認知機能は回復します。
認知症が合併している場合は、完全に認知機能が病前に元に戻らないことも多々あります。
症状の具体例
注意の障害
- 注意力や思考力が低下する
- 会話のつじつまが合わない
- ぼんやりしている
認知機能の障害
- 時間や場所がわからなくなる(見当識障害)
- 近々の出来事を思い出せない(記憶障害)
- 自分や相手のことがわからなくなる
感情の変動
- 激しい困惑、興奮、困惑、不安
- 人格、気分の変化
睡眠・覚醒リズムの障害
- 意識レベルの変動
- 眠ったような、寝ぼけているような酩酊した状態
- 覚醒状態と酩酊状態の繰り返し
幻覚や錯覚
- 幻視
- 幻覚
- 妄想
せん妄の予防
パーキンソンや脳卒中などの原疾患に罹らないようにすることやリスクのある薬物を使用しないことは発症を防ぐうえで当然のことですが、せん妄は「ストレス」が大きく関わっていることが分かっています。運動の機会を持つことや、適度な酸素・栄養・水分を摂るなど、健康状態に気を配ることが大切です。睡眠不足もストレスになりますので引っ越し、入院、施設への入所にあっても出来る限りこれまでの生活環境と同じようになる気配りが重要です。例えば場所が変わっても枕などの寝具、衣類や家具をそのまま使うといったことです。不眠、昼夜逆転も発症要因となりますので可能な限り日中起きている時間を増やすようにしましょう。太陽の光が部屋に入るようにする、日中たくさん話しかけることも有効です。