排泄の介助で大事な視点
排泄の介助をして貰う側は、介護者に対して申し訳ないという気持ちを持つ他に恥ずかしさも少なからず感じています。どのような方法であれ、自力で排泄することは自信になり、生活機能・生活の質の向上に繋がることが期待出来ます。その気持ちに寄り添わずに、介護者が効率の良さだけを優先してしまうと自尊心が傷つき、意欲の低下を招く恐れがあります。出来ることは可能な限り本人に任せていくことが排泄介助の大きなポイントと言えます。
排泄ケア用品の活用メリット
排泄のケアは毎日のことであり、生理現象でもあるため「待った」が聞きません。介助される側はもちろん、介助する側にとっても大変な活動と言えます。我々も介護相談を行う中で、排泄ケアに関する相談を多く受けます。
おむつやパットなどの排泄ケア用品を身体の状態や生活環境に合わせ、上手に選んで使うと、介護負担が軽減したり、生活の範囲が広がり前向きに生活することが期待出来ます。ここではケア用品の選び方、そのポイントを紹介したいと思います。
必要な介護のレベルは人それぞれ違います。トイレまで歩ける人もいれば、ベッド上での生活を余儀なくされている方もいます。どのような支援が必要なのか、本人が出来ること、出来ないことをまずは整理しながら方法を検討します。
例1 )トイレまで自力で歩ける場合
自力で歩ける方は、普通のトイレを使用できます。トイレで排泄が出来れば自信に繋がるだけでなく家の中を歩くことで下肢筋力の維持も期待できます。間に合わず、失禁を心配される方には「紙パット」の使用も安心に繋がります。
例2) 自力で起き上がれる場合
歩いての移動が難しくても、自力で起き上がれる方には「ポータブルトイレ」をお勧めします。寝具のすぐ側に設置できるので、トイレまで移動しなくても自力での排泄を可能とします。
例3)ベッド上で姿勢を変えることが出来る場合
自力もしくは介助で姿勢を変えることが出来る場合には、差し込み式の便器や尿器が適しています。可能であれば自身で容器を使うことにもトライしてみましょう。
例4) 寝たきりの場合
意思疎通が難しい方、尿意や便意が無い方は無理せずにおむつの使用も選択肢として考えてみましょう。
トイレの環境の整備
トイレは介護を必要とする高齢者にとって、生活の質を高める非常に重要な場所になります。トイレが使いやすい環境になることで自立に繋がる可能性があります。ここではトイレの環境整備を行う上でのポイントを紹介します。
例1) 和式の便器は洋式に
下肢筋力が低下した高齢者にとって、「しゃがむ」という動作は大変難しくなるので、和式の便器は高齢者の排泄に適しておりません。「座る」動作で排泄が行える洋式便座に変更すると飛躍的に排泄が楽になります。
例2) トイレは広い方が動きやすい
歩く、脱ぐ、座る、拭く、立つ等々、排泄に多くの動作を必要とします。またこれらを介助するにも一定のスペースが必要となります。しかし、介護施設と違い、在宅の一般住宅はトイレの面積は限られるのが一般的です。
特にトイレが「ドア」の場合、動作の邪魔になってしまうことが多く見られます。スペースの確保には、ドアから「引き戸」に変更することが効果的で介助者の動作をスムーズにすることが期待出来ます。
例3) 手すりの活用
「つかむ」という動作は介助を行う上でも、また本人にとっても大変重要な動作です。立ち上がったり、座る際に近くにしっかりつかめるものがあれば非常に安定します。「手すり」を設置することで安全に、よりスムーズに排泄することが出来るようになるでしょう。
例4 )トイレ備品の整理・整頓
パットや汚物入れを適切な場所に設置することで臭い対策も可能です。またパットなどの必要物品の置き場所を一定にすることで、介助動作も楽になります。
制度の活用
介助を補助する介護用品の購入や使用にも様々な公的サービス・制度の利用があります。高齢者世帯や障害を抱える方が在宅で生活するために、一定の条件を満たせば費用の一部の助成を受けることが出来ます。
福祉用具貸与 | 例) トイレ手すり・自動排泄処理装置など |
福祉用具購入 | 例) 腰かけ便座購入など |
住宅改修 | 例) トイレ内に手すりの設置など |
住宅改造 | 例) 和式便座から洋式便座へ変更など |
介護用品の支給 | 介護保険で要介護4・5の認定を受けている非課税世帯の方等 |
オムツの処理手数料免除 | 介護用品支給事業で紙おむつ等を利用している方等 |
介助される方の状態に合わせて、介助の方法は異なります。「適切な用具」を選択することが快適なケアに繋がりますので専門機関へまずご相談することをお勧めします。
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