台所で軽く尻もちをついてから、お母さまが「腰が痛い」と言って横になっている時間が増えた。「打ち身だから大丈夫」と本人は言うけれど、起き上がるたびに顔をしかめている――。
そんな様子が気になっている方へ、高齢の方に多い「圧迫骨折」についてまとめました。
圧迫骨折とは?
「圧迫骨折」とは、背骨を形づくっている骨(椎体)が、上下からの力に耐えきれずにつぶれるように折れてしまう骨折のことです。
背骨は、積み木のように小さな骨が積み重なってできています。そのひとつがつぶれると、背中や腰の痛みが出たり、背中が丸くなったりします。
骨が丈夫なうちは、背骨が折れるのは高い所からの転落など大きな力がかかったときが多いといわれます。ところが高齢の方では、くしゃみや咳、尻もち、重い物を持ち上げるといった日常のちょっとした動作でも起こることがあります。
くしゃみでも骨折する?骨粗しょう症との関係
小さなきっかけで背骨が折れてしまう背景には、骨粗しょう症があることが多いといわれています。骨粗しょう症は、骨の中身がスカスカになり、骨がもろくなってしまう状態です。
骨は、古い骨をこわし、新しい骨をつくることを繰り返しながら、丈夫さを保っています。加齢や、女性の場合は閉経後のホルモンの変化などによってこのバランスが崩れると、骨が少しずつ弱くなっていきます。背骨の骨は体の重みを支え続けているため、骨がもろくなると、ほんの少しの力が加わっただけでつぶれてしまうことがあるのです。
骨粗しょう症そのものは、痛みなどの自覚症状がほとんどないまま進むことが多いとされています。圧迫骨折をきっかけに、初めて骨粗しょう症に気づく方もいらっしゃいます。厚生労働省のe-ヘルスネットでも、骨粗しょう症による背骨(腰椎)などの骨折は、腰痛や寝たきりの原因になりうるとして、予防の大切さが紹介されています。
参考:骨粗鬆症(厚生労働省 e-ヘルスネット)
見逃しやすい「いつの間にか骨折」
圧迫骨折は、強い痛みが出る場合もあれば、痛みが軽く、本人も骨折に気づかない場合もあります。「いつの間にか骨折」と呼ばれることもあるほどです。次のような変化がないか、ご家族も気にかけてみてください。
- 寝返りや起き上がり、立ち上がるときに背中や腰が痛む
- 尻もちやくしゃみの後から、腰の痛みが続いている
- 背中が以前より丸くなった、身長が縮んだように見える
- 横になっている時間が増えた、動きたがらなくなった
- 食が細くなった、お腹がすぐいっぱいになると言う
高齢の方は痛みを我慢してしまったり、「腰痛はいつものこと」と思ってしまったりすることがあります。いつもと違う痛みが続くときは、整形外科など医療機関に相談してください。また、足のしびれや力の入りにくさ、排尿・排便の異常を伴う場合は、早めの受診が必要です。骨折かどうか、どのような治療が必要かの判断は、医療機関にお任せください。
どのくらいで歩けるようになるの?
骨折がわかったご家族がいちばん心配されるのは、「また歩けるようになるのか」「このまま寝たきりにならないか」ということではないでしょうか。
国立長寿医療研究センターは、いつの間にか骨折について、早い段階でコルセットをつけて安静にする治療を基本とし、手術をせずに経過をみることが多いと紹介しています。早めに治療を始め、リハビリを続けることで、歩く力を取り戻していく方も多いとされています。
ただし、歩けるようになるまでの期間や回復の度合いには、大きな個人差があります。骨折の程度、骨の丈夫さ、骨折する前にどのくらい動けていたか、ほかの持病などによって見通しは変わります。「いつ頃から歩く練習を始められるか」「家でどこまで動いてよいか」は、主治医やリハビリの専門職に遠慮なく聞いてみてください。
参考:“あれっ?なんか腰が痛いな・・・” いつの間にか骨折、その原因は?(国立長寿医療研究センター)
骨折後の暮らしで気をつけたいこと
圧迫骨折の治療では、痛みに応じた安静や、コルセットなどの装具、痛み止めのお薬が使われることがあります。治療の方法は骨折の状態によって異なるため、安静の程度や装具の使い方は、医師の指示に従いましょう。そのうえで、ご家族には次のような点に気を配っていただきたいと思います。
「動かない時間」が長くなりすぎないように
痛みがあると、どうしても横になっている時間が長くなります。けれども、高齢の方が長く体を動かさずにいると、筋力が落ち、歩く力や食欲が衰えて、フレイル(心と体の活力が落ちた状態)につながるおそれがあります。医師やリハビリの専門職と相談しながら、無理のない範囲で体を動かしていくことが大切です。
次の骨折・転倒を防ぐ住まいの工夫
一度圧迫骨折をした方は、ほかの骨も弱くなっている可能性があります。転倒による骨折を防ぐためにも、住まいを見直しておきましょう。
- 床の段差をなくし、つまずきやすい物を片づける
- 廊下・トイレ・浴室に手すりをつける
- 夜間のトイレの通り道に足元灯をつける
- 低い所の物を取るときに深くかがまなくて済むよう、よく使う物は腰の高さに置く
手すりの取りつけや段差の解消などは、介護保険の住宅改修の対象になる場合があります。詳しくは住宅改修とは?【支給対象や申請方法、注意点などを徹底解説】をご覧ください。
骨の健康について、主治医と話しておく
骨粗しょう症が見つかった場合は、骨密度の検査やお薬の治療を勧められることがあります。食事でカルシウムやビタミンD、たんぱく質をとることや、日光を浴びること、適度に体を動かすことも、骨の健康を保つうえで大切だといわれています。どのような対策が合うかは、主治医に相談してみてください。
まとめ/「腰が痛い」を、年のせいで片づけない
高齢の方の圧迫骨折は、くしゃみや尻もちといった小さなきっかけで起こり、気づかれないまま過ごしてしまうこともあります。「腰が痛い」「背中が丸くなった」という変化に気づいたら、早めに医療機関へ。そして骨折の後は、寝たきりにならないよう、暮らし全体を見直していくことが大切です。
コルセットをつけている間の買い物や掃除はどうしよう、手すりをつけたいけれど何から始めればいいのか――。骨折の後は、こうした「暮らしの困りごと」が一度に押し寄せます。仙台市青葉区の大石原苑介護支援センター・南吉成地域包括支援センター(社会福祉法人大石ケ原会)では、要介護認定の申請や住宅改修、使える介護サービスなど、介護のことをご家族からもご相談いただけます。回復を待つ間の暮らしの組み立てを、一緒に考えていきましょう。
