大腿骨頸部骨折と高齢者|転んだ後のサインと退院後の備え

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「母が転んで脚の付け根が痛いと」高齢者に多い大腿骨頸部骨折

「母が家の中で転んで、脚の付け根が痛いと言っている」。
高齢の親を持つご家族にとって、転倒はとても身近で、そして怖い出来事です。
高齢の方が転んだ時に起こりやすい骨折のひとつが、太ももの骨の付け根部分が折れる「大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)」です。

大腿骨は太ももの中にある長い骨で、その上端は丸い形をして骨盤とつながり、股関節をつくっています。この丸い部分のすぐ下の、少しくびれた「首」のような部分を「頸部」と呼びます。体重を支える大切な場所でありながら、年齢とともに骨がもろくなると、尻もちや横向きに転んだだけでも折れてしまうことがある部分です。

この骨折は歩く力に直接かかわるため、その後の暮らし方を大きく左右することがあります。当記事では、ご家族が知っておきたいポイントを順番にお伝えします。

なぜ高齢者に起こりやすいの?

大腿骨頸部骨折の背景には、大きく分けて「骨のもろさ」と「転びやすさ」の2つがあると考えられています。

【骨のもろさ】

年齢を重ねると骨の量や質が低下しやすくなります。特に女性は、閉経後に骨がもろくなりやすいと言われています。骨がもろくなる「骨粗鬆症」については、骨粗鬆症の症状や予防について解説した記事もあわせてご覧ください。

【転びやすさ】

  • 脚の筋力やバランス感覚の低下
  • 視力の低下で段差や物が見えにくい
  • 夜間のトイレなど、暗い中での移動
  • 眠りを助ける薬や血圧の薬などによるふらつき
  • 家の中の段差、敷物、電気コード

体の衰え全般は「フレイル」とも呼ばれ、転倒とも深く関係しています。気になる方はフレイルの原因や予防法を解説した記事も参考にしてください。
参考:転びやすくなる原因は?(国立長寿医療研究センター)

転んだあとに気づきたいサイン

大腿骨頸部骨折では、次のような様子が見られることがあります。

  • 脚の付け根(股関節のあたり)を痛がる
  • 立ち上がれない、体重をかけられない
  • 痛い側の脚が短く見えたり、外側に向いていたりする
  • 脚を動かそうとすると強く痛がる

注意したいのは、骨折のしかたによっては、痛みがあっても歩けてしまう場合もあると言われている点です。「歩けているから大丈夫」と様子を見ているうちに、ずれが大きくなってしまうこともあります。また、認知症のある方は痛みをうまく言葉にできないことがあり、「急に歩かなくなった」「触ると嫌がる」といった変化がサインになることもあります。

転倒してしまった時の対応

高齢の方が転んで脚の付け根を痛がっている時は、無理に立たせたり歩かせたりしないことが大切です。

  • 痛みの少ない楽な姿勢で休ませ、毛布などで体を冷やさないようにする
  • 頭を打っていないか、意識や受け答えはいつもどおりかを確認する
  • 立てない・強く痛がる・頭を打った時は、ためらわず救急要請を含めて医療機関へ連絡する
  • いつ・どこで・どう転んだか、飲んでいる薬をメモしておく

判断に迷う時は、かかりつけ医や、各地域の救急相談窓口に相談する方法もあります。受診するかどうかの判断は、ご家族だけで抱えずに医療機関へ相談してください。

治療とリハビリ、退院後の暮らし

治療の方法は、骨折の状態やご本人の体の状態をふまえて医師が判断します。手術が検討されることも多く、その後はできるだけ早い時期からリハビリテーションを進めていくのが一般的な流れとされています。
長く横になったままの生活が続くと、筋力の低下や床ずれ、認知機能の変化などが起こりやすくなるため、「動ける力を保つ」ことが大切な目標になります。リハビリについては後遺症のリハビリテーションを解説した記事も参考になります。

一方で、退院後の暮らしは、骨折前と同じにはいかないこともあります。杖や歩行器が必要になる、段差の多い自宅では生活しにくくなる、夜間のトイレに付き添いが必要になる──。ご家族の介護の負担が急に増えるのも、この時期です。

また歩けるようになるの?寝たきりにならない?

骨折がわかったご家族がいちばん心配されるのは、「母はまた歩けるようになるのか」「このまま寝たきりになってしまわないか」ということではないでしょうか。

整形外科の診療ガイドラインでは、適切な手術やリハビリを行っても、すべての方が骨折する前の日常の活動レベルに戻れるわけではないとされています。歩く力の回復にかかわる主な要素としては、年齢、骨折する前にどのくらい歩けていたか、認知症の程度が挙げられています。回復の度合いや道のりには、個人差があります。

参考:大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン2021(改訂第3版)(日本整形外科学会・日本骨折治療学会)

「いつ頃から歩く練習を始めるのか」「家ではどこまで動いてよいのか」は、主治医やリハビリの専門職に遠慮なく聞いてみてください。ご本人の見通しを具体的に聞いておくと、退院後の暮らしの準備も考えやすくなります。

ご家族ができる転倒予防の工夫

一度骨折を経験した方は、再び転倒することへの不安も抱えがちです。暮らしの中で、次のような工夫を取り入れてみてください。

  • 廊下や寝室からトイレまでに足元灯をつける
  • 敷物やコードなど、つまずきやすい物を片づける
  • 玄関・トイレ・浴室に手すりをつける
  • かかとのある、脱げにくい履き物を選ぶ
  • 服用中の薬でふらつきがないか、医師や薬剤師に確認する

手すりの設置や段差の解消には、介護保険の住宅改修の制度が使える場合があります。詳しくは住宅改修の支給対象や申請方法を解説した記事をご覧ください。

まとめ/「その後の暮らし」を早めに考えておく

大腿骨頸部骨折は、高齢の方にとって転倒ひとつで起こりうる身近なけがです。回復の道のりは人それぞれだからこそ、ご本人のペースに合わせて、退院後の暮らしを前もって整えておくことが、ご本人とご家族の安心につながります。
自宅に戻るとして、手すりや段差はどうするか。夜のトイレには誰が付き添うのか。介護保険のサービスは何が使えるのか。こうしたことも、入院中のうちに相談先を知っておくだけで、退院が決まった時にご家族だけで抱え込まず、落ち着いて準備を進めやすくなります。

退院後の暮らし、誰に相談すればいいか迷っていませんか?
社会福祉法人大石ケ原会の「大石原苑介護支援センター・南吉成地域包括支援センター」(仙台市)は、介護の困りごとを相談できる窓口です。
「退院してから家でどう支えればいいのか」「また転ばないか心配」「介護保険のことがよくわからない」など、退院が決まる前の段階からお気軽にお問い合わせください。

※本記事は一般的な情報をお伝えするものであり、診断や治療の代わりとなるものではありません。症状や受診の判断については、医師・医療機関にご相談ください。

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