「実家の居間が、思ったより寒かった」高齢者の低体温症
冬の朝、久しぶりに実家に寄ったら、居間がひんやりしていた。母は「もったいないから」とストーブを消したまま、薄いカーディガン1枚でテレビを見ていた──。
電話で話した父の声が、いつもよりゆっくりで、なんだかぼんやりしていた。
寒い季節、そんな親の様子にふと不安を覚えたことはありませんか?
「低体温症(ていたいおんしょう)」と聞くと、雪山での遭難や冬の海の事故を思い浮かべる方が多いかもしれません。
けれど実は、高齢の方の場合、ふだん暮らしている家の中でも起こることがあると言われています。
人の体は、寒い時には震えたり血管を縮めたりして熱を逃がさないようにし、体の中心の温度(深部体温)を一定に保っています。この仕組みが追いつかず、体の中心の温度が下がりすぎてしまった状態が「低体温症」です。体が冷えると、心臓や脳の働きにも影響が出ることがあるため、早めに気づくことが大切です。
離れて暮らす親や一人暮らしの親のことが気になる方も多いと思います。当記事では、ご家族が知っておきたい見守りのポイントをまとめました。
なぜ室内でも起こるの?高齢者が冷えやすい理由
高齢の方が低体温症になりやすい背景には、体の変化と暮らし方の両方が関係していると考えられています。
【体の変化によるもの】
- 寒さを感じにくくなり、冷えていることに自分で気づきにくい
- 筋肉の量が減り、体の中で熱をつくる力が弱くなる
- 食事の量が減り、熱のもとになるエネルギーが足りなくなる
- 持病や服用中の薬が、体温の調節に影響することがある
【暮らし方によるもの】
- 電気代を気にして暖房を控えている
- 夜間や明け方、暖房を切った部屋で長く過ごしている
- 家の中で転んで起き上がれず、冷たい床の上に長くいた
- 入浴後や着替えのあとに、体が濡れたまま・薄着のまま過ごしている
特に一人暮らしの方が家の中で転倒し、誰にも気づかれないまま時間がたってしまうケースは、ご家族が特に気をつけたい場面です。
気づきたいサイン
低体温症は、本人が「寒い」と訴えないまま進むこともあります。次のような様子が見られたら注意が必要です。
- 手足だけでなく、お腹や背中など体の中心まで冷たい
- 顔色が悪い、唇や指先の色が悪い
- 話し方がゆっくりになる、ろれつが回りにくい
- ぼんやりしている、反応がいつもより鈍い
- 動作がぎこちない、ふらつく
寒さによる震えはわかりやすいサインですが、冷えが進むと震えが止まってしまうこともあると言われています。「震えていないから大丈夫」とは限りません。また、ぼんやりした様子は認知症の症状や「年のせい」と見分けにくく、見過ごされやすい点にも注意が必要です。
低体温症が疑われる時の対応
意識がはっきりしない、呼びかけへの反応が弱い、体がとても冷たいといった場合は、ためらわず救急要請を含めて医療機関へ連絡してください。判断に迷う時は、かかりつけ医や地域の救急相談窓口に相談する方法もあります。
医療機関につながるまでの間は、次のことを意識しましょう。
- 暖かい部屋に移し、濡れた衣類は乾いたものに替える
- 毛布などで全身を包み、それ以上体温が逃げないようにする
- 体を強くこすったり、急に熱いお湯に入れたりしない
- 無理に歩かせたり、激しく動かしたりしない
急に温めたり体を大きく動かしたりすると、かえって体に負担がかかることがあると言われています。「温めればよい」と自己判断で急がず、医療機関の指示に従うことが大切です。
参考:応急手当WEB講習「低体温症」(総務省消防庁)
冬の見守りポイント/ご家族ができること
予防のためには、日々の暮らしの中で「冷えにくい環境」をつくっておくことが大切です。
- 室温計を置き、暑い・寒いを感覚ではなく目で確かめられるようにする
- 寝室やトイレ、脱衣所など、家の中の寒い場所を減らす
- 重ね着やひざ掛け、靴下などで手軽に温かさを保つ
- 温かい食事や飲み物をとり、食事量が減っていないか気にかける
- 電話や訪問の回数を増やし、声の様子や受け答えを確かめる
冬の家の中では、暖かい部屋と寒い浴室・脱衣所の温度差による「ヒートショック」にも注意が必要です。ヒートショックの予防策と対応を解説した記事や、高齢者がかかりやすい冬の感染症についての記事もあわせてご覧ください。
まとめ/「ひとりの冬」を見守れる体制を
高齢の方の低体温症は、特別な場所ではなく、いつもの家の中で静かに進むことがあります。本人が寒さに気づきにくい分、周りの人の「いつもと違う」に気づく目が大きな支えになります。
一方で、離れて暮らしていると毎日様子を見に行くのは難しいものです。電話だけでは寒さや顔色まではわからず、「この冬、ひとりで大丈夫だろうか」という心配が残ります。
夜間や早朝の見守りにはどんな形があるのかを知っておくと、いざという時に慌てずにすみます。一例として、ケアハウスの24時間見守り体制を紹介した記事も参考にしてみてください。
離れて暮らす親の冬、誰に相談すればいいか迷っていませんか?
社会福祉法人大石ケ原会の「大石原苑介護支援センター・南吉成地域包括支援センター」(仙台市)は、介護の困りごとを相談できる窓口です。
「暖房を控えがちな親が心配」「ひとりの時に転んだらと思うと不安」「冬だけでも見守りを増やせないか」など、寒くなる前の段階からお気軽にお問い合わせください。
※本記事は一般的な情報をお伝えするものであり、診断や治療の代わりとなるものではありません。症状や受診の判断については、医師・医療機関にご相談ください。
