「父が夜中に何度もトイレへ」高齢男性に多い前立腺肥大症
「最近、父が夜中に何度もトイレに起きている」「トイレが長くなった気がする」。
離れて暮らす親や同居する親のそんな変化に、ふと気づいたことはありませんか?
年齢のせいだろうと見過ごされやすいのですが、男性の場合、その背景に「前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)」が関係していることがあります。
前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱のすぐ下、尿の通り道(尿道)を取り囲むように位置しています。
年齢を重ねるにつれてこの前立腺が大きくなり、尿道が圧迫されて尿が出にくくなる、すっきり出きらないといった症状が現れる状態を「前立腺肥大症」と言います。高齢の男性によく見られる病気のひとつです。
命に直結する病気というイメージは少ないかもしれません。けれど、夜にぐっすり眠れない、外出先のトイレが心配で出かけるのがおっくうになる、といった形で暮らし全体の質に影響しやすいのがこの病気の特徴です。当記事では、ご家族の目線で知っておきたいポイントをまとめました。
前立腺肥大症で見られやすい症状
前立腺肥大症の症状は、大きく分けて「尿を出すときの症状」「尿をためるときの症状」「出したあとの症状」に分けて考えられています。
【尿を出すときの症状】
- 尿の勢いが弱くなった、細くなった
- 出始めるまでに時間がかかる
- 途中で尿が途切れる
- お腹に力を入れないと出にくい
【尿をためるときの症状】
- トイレが近い(昼間の頻尿)
- 夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
- 急に強い尿意がきて、我慢するのがつらい
【出したあとの症状】
- 出しきった感じがしない(残尿感)
- トイレを出たあとに少し漏れてしまう
ただし、こうした症状は前立腺肥大症だけで起こるものではありません。膀胱そのものの働きの変化、尿路の感染症、ほかの病気や服用中の薬が関係していることもあります。症状だけで家族が判断せず、気になる時は泌尿器科などの医療機関で相談することが大切です。
夜間頻尿・残尿感との関係
前立腺が大きくなると、膀胱に尿が残りやすくなったり、膀胱が敏感になったりすることがあります。その結果、少したまっただけで尿意を感じ、夜中にも何度も目が覚めてしまうことがあります。
夜間頻尿は、睡眠不足や日中のだるさにつながるだけでなく、暗い中で急いでトイレに向かう途中の転倒にもつながりやすく、高齢の方にとっては見過ごせない問題です。夜間頻尿については、高齢者の夜間頻尿について解説した記事でも詳しく取り上げていますので、あわせてご覧ください。
参考:夜間のトイレ 何回行きますか【夜間頻尿】(国立長寿医療研究センター)
家族が気づきたいサインと、急いで受診したい状態
排尿の悩みは、本人がなかなか口にしづらいものです。特に男性は「恥ずかしい」「年だから仕方ない」と我慢してしまうことも少なくありません。だからこそ、ご家族の「いつもと違う」に気づく目が助けになります。
日頃から次のような様子が見られたら、一度医療機関で相談してみることをおすすめします。
- 夜中に何度もトイレに起きている
- トイレにいる時間が以前より長い
- 下着が汚れていることが増えた、においが気になる
- 外出や旅行を避けるようになった
- 水分を控えるようになった(トイレを気にして)
また、次のような状態は早めの受診が必要な場合があります。迷った時は、かかりつけ医や医療機関に連絡して指示を受けてください。
- 尿意はあるのに、尿がまったく出ない
- 下腹部が張って強く痛む
- 尿に血が混じる
- 発熱や、排尿時の強い痛みがある
なお、市販の風邪薬などの中には、尿を出しにくくする作用をもつ成分が含まれるものもあると言われています。前立腺の症状がある方が薬を飲む時は、医師や薬剤師に一言伝えておくと安心です。
受診するとどんなことをするの?
泌尿器科では、症状についての問診のほか、尿の検査や、超音波(エコー)で前立腺の大きさや膀胱に残った尿の量を確認する検査などが行われることがあります。治療方針は、症状の程度や暮らしへの影響、ほかの病気の有無などをふまえて医師が判断します。生活習慣の見直しや薬、場合によっては手術などが検討されます。
受診の際には、「夜に何回トイレに起きたか」「1回あたりどのくらい出たか」などを数日分メモしておくと、医師に状況が伝わりやすくなります。本人が説明しにくい場合は、ご家族が付き添ってメモを渡すのもひとつの方法です。
ご家族や介護者ができること
医療機関での相談とあわせて、暮らしの中でご家族ができる工夫もあります。
- 寝室からトイレまでの通り道に足元灯をつけ、物を置かない
- 夜間はポータブルトイレや尿器の活用も検討する
- 就寝前の水分のとり方について、医師に相談しておく(自己判断で水分を控えすぎない)
- トイレの悩みを責めずに、話しやすい雰囲気をつくる
特に「水分を控える」ことは、高齢の方では脱水につながるおそれがあるため注意が必要です。トイレの失敗が続く時は、失禁のメカニズムと対処法や、排泄ケアで気をつけたいポイントも参考にしてみてください。本人の自尊心を大切にしながら、さりげなく支えることが、長く続けるコツです。
受診のあとも続く「夜のトイレ」、家族の負担にも目を向けて
受診して治療が始まっても、夜中のトイレの回数がすぐに落ち着くとは限りません。
同居していれば、夜中の物音で目が覚める。父がふらつきながら廊下を歩く足音に、「転ばないだろうか」と耳をすませてしまう。足元が不安な時は、トイレまで付き添うこともある──。本人だけでなく、そばにいるご家族の眠りも少しずつ削られていきます。
離れて暮らしている場合も、「夜中にひとりでトイレに立って、転んでいないだろうか」という心配は消えません。こうした夜間のトイレ介助や転倒の心配は、病気の治療とは別に、介護の困りごととして相談してよいものです。ポータブルトイレや手すりなどの使える道具、夜間の見守りの方法など、介護の専門職と一緒に考えられることがあります。
まとめ/「年のせい」で片づけず、早めに相談を
前立腺肥大症は、高齢の男性にとって身近な病気です。夜間頻尿や残尿感は「年だから」と片づけられがちですが、睡眠や外出、転倒のリスクなど、暮らしのさまざまな場面に影響します。
体のことは、まず医療機関に相談すること。そして、夜のトイレの付き添いや転倒の心配といった暮らしの困りごとは、介護の相談窓口にも話してみてください。
夜中のトイレの付き添いや転倒の心配、誰に相談すればいいか迷っていませんか?
社会福祉法人大石ケ原会の「大石原苑介護支援センター・南吉成地域包括支援センター」(仙台市)は、介護の困りごとを相談できる窓口です。
「夜、何度も起きる父をどう見守ればいいか」「家族の睡眠も限界に近い」といった、まだ介護とは呼べないくらいの段階のお悩みも、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は一般的な情報をお伝えするものであり、診断や治療の代わりとなるものではありません。症状や受診の判断については、医師・医療機関にご相談ください。
