ショートステイから帰ってきた母の髪が、きれいにとかされていた。伸びていた爪も短く切ってあり、本人は「お風呂でね、ゆっくり洗ってもらったのよ」とうれしそうに話している。送迎の職員さんの名札には「介護福祉士」と書かれていた――。
親が介護サービスや施設を使うようになると、「介護福祉士」という言葉を目にする機会が増えます。
この記事では、介護福祉士の仕事内容と、施設で家族の代わりに担っていること、そしてご家族が頼めること・相談できることをご紹介します。
介護福祉士とは?
介護福祉士は、法律(社会福祉士及び介護福祉士法)で定められた介護の国家資格です。法律では、専門的な知識と技術をもって、心や体の障害によって日常生活に支障がある方に、その方の心身の状況に応じた介護を行い、本人と、その介護をする人に対して介護に関する指導を行うことを仕事とする人、とされています。
登録を受けた人だけが「介護福祉士」と名乗ることができます。ただし、施設で介護をしているスタッフ全員が介護福祉士というわけではありません。資格の有無にかかわらず、介護職員として働いている方もいます。介護職員の仕事全体については「高齢者施設における介護職員とは?」でもご紹介しています。
参考:社会福祉士及び介護福祉士法(e-Gov法令検索・デジタル庁)
施設で介護福祉士が担っていること
施設やサービスの種類によって体制は異なりますが、介護福祉士が担う仕事には、たとえば次のようなものがあります。
毎日の暮らしの介助
食事、入浴、トイレ、着替え、ベッドから車いすへの移動など、ご家族が自宅で担ってきた介助の多くを、その方の体の状態や生活のペースに合わせて行います。介助の手順の例は「食事介助のポイントや手順」や「移乗の方法」でも紹介しています。
「いつもと違う」に気づき、つなぐ
毎日いちばん近くで過ごすからこそ、食事の量、表情、肌の様子、歩き方などの小さな変化に気づきやすい立場です。気になる変化があれば、看護職員などの医療職やケアマネジャーに伝え、必要な対応につなげます。体調の判断や医療的な対応は、看護職員や医師が担う役割です。施設の看護職員については「高齢者施設における看護職員とは?」をご覧ください。
「できること」を残す介助
介護は「全部やってあげる」ことだけではありません。時間がかかってもご本人ができることは任せ、できないところだけを手伝う。その方らしい暮らしを続けられるよう、手を出す場面と見守る場面を見極めるのも、介護の専門職としての大切な仕事です。
なお、法律の定義には、医師の指示のもとで行う痰の吸引など、一部の行為も介護に含まれています。ただし、誰がどこまで行えるかには細かな条件が決められています。医療的なケアについては、施設の看護職員や主治医に確認しましょう。
ご家族も「教わってよい」相手です
自宅で介護を続けていると、「この抱え方で合っているのかな」「おむつの当て方が下手で、いつも漏れてしまう」と、ひとりで悩むことがあります。でも、誰かに聞くほどのことではない、と思ってしまいがちです。
先ほど見たとおり、介護福祉士の仕事には「介護をする人への指導」も含まれています。ショートステイやデイサービスの送迎のとき、面会や一時帰宅の前などに、次のようなことを聞いてみてもよいのです。
- ベッドから起こすとき、腰を痛めにくい体の使い方
- 着替えを手伝うときの順番やコツ
- おむつやパッドの当て方、選び方
- 本人が嫌がるとき、どんな声のかけ方をしているか
- 施設での様子と、家ではどう違うか
自宅での着替えやおむつ交換については、「画像で解説!更衣介助」や「プロが教える高齢者の“おむつ交換方法”」も参考になります。ただし、体の状態によって合うやり方は変わります。痛みや持病がある場合は、主治医や専門職に相談しながら進めてください。
施設やサービスを選ぶときに聞いてみたいこと
施設の見学や、サービスの利用を相談するとき、介護を担うスタッフについて次のようなことを聞いてみると、毎日の暮らしの様子が見えてきます。
- 介護職員の中に、介護福祉士の資格を持つ人はどのくらいいるか
- 食事や入浴、トイレの介助で、本人のペースをどう大事にしているか
- 体調の変化に気づいたとき、家族への連絡はどうなっているか
- 本人の「できること」を残すために、どんな工夫をしているか
- 家族が介護のやり方を教わったり、相談したりする機会はあるか
事業所の職員体制などの情報は、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で公表されているものもあります。ただし、資格を持つ人の数だけで、介護の良し悪しが決まるわけではありません。実際にスタッフが利用者にどう声をかけているか、見学のときの雰囲気も大切な手がかりです。見学で見ておきたい点は「良い施設、悪い施設の見分け方。スタッフの『ここ』に注目!」でもまとめています。
まとめ/介護のプロは、家族の「相談相手」にもなる
介護福祉士は、食事や入浴、トイレなどの毎日の介助を通して、ご本人の暮らしを支える介護の国家資格を持つ専門職です。そして法律上、介護をするご家族に介護のやり方を伝えることも、その仕事に含まれています。施設に任せる部分と家族が担う部分、どちらについても、遠慮せず聞いてみてください。
自宅で毎晩のおむつ交換や入浴の介助を続けていて、「やり方が合っているのか分からない」「腰が痛くて、このままだと続けられない」と感じているなら、それは介護サービスの使い方を見直すサインかもしれません。家で抱えている介助の大変さを、そのまま言葉にして相談してみませんか。
家での介助、このやり方で続けられるか迷ったら
社会福祉法人大石ケ原会の「大石原苑介護支援センター・南吉成地域包括支援センター」(仙台市青葉区)では、ご家族からの介護の困りごとのご相談をお受けしています。入浴や排泄の介助を手伝ってもらえるサービスにはどんなものがあるのかなど、今の介護を少し軽くするための選択肢を一緒に整理できます。
