健康を維持するために高齢者の食事で気をつけること

高齢者の食事
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高齢者の食事の現状

「食事」は人間の欲求の中でも上位に位置するものです。美味しいものを食べたい、たまには贅沢をして豪華なものを食べたい。どうせ食べるなら家族や仲の良い友達と一緒に楽しい食事にしたい。

つまり人間にとって食事とは単なる生きるうえでの栄養摂取を超えたものであり、だからこそ「食文化」とまで言われるまでに昇華したのでしょう。

ところがお歳を召すと、食がだんだんと細くなり、食欲も衰えてきます。食に対しての関心が薄れ、食事を抜く回数が増えたり、毎日代り映えのないメニューとなるなど、高齢者の食生活は乱れがちです。

加えて、超高齢化社会において深刻な問題となっているのが「高齢者のひとり暮らし」です。
20代のひとり暮らしの食生活と同様に、「孤食」「メニューの偏り」「不規則化」によって、とりわけひとり暮らしの高齢者は、ご家族と同居する高齢者よりも低栄養に陥りやすい環境にあると言われています。

低栄養のリスク

「低栄養」とは、読んで字のごとく栄養状態が低いことを意味します。
当たり前のことですが、健康的に生きるためには栄養を摂る必要があります。それが出来なくなると必ず悪い影響が出てしまいます。

お歳を召すと筋力の低下や筋肉量の減少がありますが、これは自然な老衰現象であるので致し方ないことです。

しかしそこに「低栄養」が加わってしまうことで「※フレイル(虚弱)」状態に進行させ、「※サルコペニア」「※ロコモティブシンドローム」を引き起こす要因となります。

※フレイルとは?
「加齢により心身が老い衰えた状態」
※サルコペニア
加齢や疾患により、筋肉量が減少することで、握力や下肢筋力・体幹筋など全身の筋力低下が起こること
※ロコモティブシンドローム
移動するための能力が不足したり、衰えたりする状態を指す

 低栄養の要因には主に以下のことが挙げられます。

社会的要因独居 介護力の不足 ネグレクト 孤独感 貧困
精神的心理的な要因認知機能障害 うつ 誤嚥や窒息への恐怖
疾病要因臓器不全 炎症 悪性腫瘍 疼痛 口腔内の問題 薬物の副作用 
咀嚼、嚥下障害  日常生活動作の障害 消化管の問題
加齢の影響嗅覚、味覚の障害  食欲の低下
その他食形態の問題  栄養に関する誤った認識  医療者の誤った指導

高齢者の食事に影響する様々な要因

 歳を重ねるにつれて、体に様々な変化が現れ、食事をうまく摂れなくなり、食生活にも様々な影響を及ぼします。もちろんその変化には個人差はありますが、「誰にでも」起こることです。

【能力低下の例】

味覚塩味、甘味の感覚が鈍くなり、濃い味を好むようになる。
噛む力歯が弱くなることで柔らかいものを選んで食べるようになる。そうなると栄養バランスが偏り、偏食になったりする。
飲み込む力の衰えむせたり、つかえたり、食べ物が喉を通りにくくなる。こうした経験をすると食べることが嫌になる傾向がある。
唾液の量が減少唾液の分泌が減ると、口の中での消化が上手くいかず、結果として胃に負担がかかる。口の中も荒れて沁みると食欲の低下にも繋がってしまう。
消化液も減少し、胃腸の働きが弱くなる消化機能が衰えると、下痢をしやすくなる。併せて腸の働きも弱くなり、便秘も起こしやすく食欲不振になり、栄養不足となる。
のどの渇きが鈍くなる喉の渇きを感じにくくなることで、脱水症状を引き起こしやすくなる。

視覚・聴覚・嗅覚・触覚・温覚
これらが衰えると、色合いや香りを感じにくくなり食欲減退に繋がります。
傷んでいるものが分かりにくくなったり、熱いものに気づかず、火傷することもあります。

食事を楽しむためには?

これまで高齢者の食事の現状、低栄養のリスク、食事に影響する様々な要因についての基本的な情報を載せさせていただきました。しかし、健全かつ健康的な「食」を可能としていくには、これだけでは足りません。

必要な栄養を取り入れること」「生活のリズムや季節感を感じること」「楽しみや生きがいを感じること」も大切です。
つまり、食事の「意義」を理解することが重要なのです。

雰囲気、その時の気分、食事を共にする相手によっても変化していくものです。こうした食事を楽しむ「環境」についても、これから詳しくブログで触れていこうと思います。

 

    

  

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