久しぶりに母と買い物に出かけると、駅の階段の途中で手すりにつかまり、しばらく立ち止まってしまった。「最近、すぐ息が切れるのよ。年ね」と笑う顔が、なんだか白っぽく見える。
「疲れやすいのは年のせい」と、親も自分も思い込んでいませんか?
疲れやすさや息切れ、ふらつきの陰に、貧血が隠れていることがあります。そして高齢の方の貧血は、その原因を医療機関で確かめることが大切とされています。
この記事では、高齢の方の貧血の基本と、ご家族が気づきたいサイン、暮らしの中で気をつけたいことについてご紹介します。
貧血とは?
血液の中の赤血球には、ヘモグロビンという、全身に酸素を運ぶ役割をもつ成分が含まれています。貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンが少なくなり、体のすみずみに酸素を運ぶ力が落ちている状態のことです。血液検査で調べます。
よく「立ちくらみ=貧血」と言われますが、急に立ち上がったときのくらっとする感じは、血圧の変化など別の原因で起こることもあり、「立ちくらみがある=貧血」とは言い切れません。「貧血かどうか」は、血液検査をもとに医師が判断するものと覚えておきましょう。
参考:Hb/血色素量(厚生労働省 e-ヘルスネット)、鉄欠乏性貧血、その他の造血因子不足による貧血(慶應義塾大学病院 KOMPAS)
高齢の方の貧血、考えられる原因
貧血にはいくつもの種類があり、原因によって対応が変わります。高齢の方では、たとえば次のようなことが関係している場合があります。
- 鉄の不足:食事の量が減った、食事がかたよっている、胃や腸などから少しずつ出血している
- ビタミンB12や葉酸の不足:食事の内容や、胃の手術を受けたことがあるなど
- 腎臓の病気や、ほかの持病:慢性の腎臓の病気や、がん・感染症・膠原病などが関係する場合
- 血液そのものの病気など
とくに気をつけたいのは、胃や腸などからの出血が、貧血のきっかけになっている場合があることです。痛み止めの飲み薬で胃から出血することもあるとされ、本人が気づかないまま出血が続いていることもあるため、「鉄分をとれば大丈夫」と自己判断せず、原因を医療機関で調べてもらうことが大切です。鉄のサプリメントなども、使う前に医師に相談しましょう。
家族が気づきたいサイン
貧血がゆっくり進んだ場合には、ほとんど症状がないこともあります。だからこそ、「前と比べてどうか」を見られるご家族の目が大切です。次のような変化がないか、気にかけてみてください。
- 少し動いただけで息が切れる、動悸がする
- 疲れやすい、横になっている時間が増えた
- 顔色が悪い、白っぽい
- ふらつく、めまいがする
- 頭が重い、集中しにくいと言う
ただし、どれも心臓や肺の病気など、別の原因で起こることもあるため、これだけで判断はできません。気になる変化が続くときは、健康診断の結果と一緒にかかりつけ医に伝えてください。
早めに医療機関に相談したいとき
次のような様子があるときは、様子を見ずに、早めに医療機関に相談しましょう。
- 黒っぽい便や、血の混じった便が出る
- 息切れや動悸が強い、安静にしていても苦しそう
- 健康診断で貧血を指摘されたまま、受診していない
受診先に迷うときは、まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門の診療科を紹介してもらいましょう。検査や治療の内容は、医師の判断に従ってください。
暮らしの中で気をつけたいこと
ふらつきによる転倒に備える
息切れやふらつきがあると、転倒の心配も出てきます。立ち上がるときは一度座ったまま一呼吸おく、階段や廊下に手すりをつける、床の物を片づける、夜間の足元を明るくするといった工夫を考えてみましょう。手すりの取りつけなどは、介護保険の住宅改修の対象になる場合があります。くわしくは「住宅改修とは?」をご覧ください。
食事の内容と量に目を向ける
一人暮らしや食が細くなった親の場合、パンとお茶だけ、麺類だけ、といった食事が続いていることもあります。帰省したときに冷蔵庫や食卓の様子をさりげなく見てみると、食事の変化に気づくきっかけになります。主食・主菜・副菜のそろった食事については「健康を維持するために高齢者の食事で気をつけること」、「高齢者に適した献立について」もご参考にしてください。持病で食事の制限がある方は、内容を変える前に医師や管理栄養士に相談しましょう。
「動かなくなる」悪循環に気をつける
疲れやすいからと動かずにいると、体の力が落ち、ますます動くのがおっくうになることがあります。年齢とともに心身の活力が弱っていく状態は「フレイル」と呼ばれ、早めに気づいて手を打つことが大切とされています。「フレイルはどんな状態?」もあわせてご覧ください。どのくらい体を動かしてよいかは、主治医に確認してから取り組みましょう。
まとめ/「年のせい」で終わらせないために
貧血は、全身に酸素を運ぶ力が落ちている状態で、高齢の方では食事の変化や持病、体の中の出血など、さまざまな原因が関わることがあります。疲れやすさ、息切れ、顔色の変化を「年のせい」で片づけず、気になったら健康診断の結果と一緒にかかりつけ医に相談しましょう。
「階段で立ち止まるようになった」「出かけるのをおっくうがる」。そんな変化が続くと、買い物や通院、家の中の移動にも少しずつ手助けが必要になってきます。ふらつきが心配な親の買い物や通院、家の中の安全について、使えるサービスがあるかを、介護の相談窓口で聞いておくと安心です。「最近こんなことがあった」と、気づいた場面をそのまま話してみてください。
親のふらつきや疲れやすさが気になって、誰に相談すればいいか迷ったら
社会福祉法人大石ケ原会の「大石原苑介護支援センター・南吉成地域包括支援センター」(仙台市青葉区)では、ご家族からの介護の困りごとのご相談をお受けしています。ふらつきが心配な親の家の中の安全や、買い物・通院の外出をどう支えればいいかなど、気になることを聞いてみてください。
▶ 介護の相談窓口(大石原苑介護支援センター)はこちら
