お歳を召すと、老化や何らかの疾患、またはケガなどによって体を動かすことに支障が現れることがあります。「体を動かす」と言うのは簡単ですが、実際には単純なことではありません。
「移動する」という生活動作を例にして考えてみましょう。
目的の場所に到達するまでに人間が行う動作は足を交互に出すだけではありません。
①まずは立ち上がり
②目的の場所に目を向け
③手と足を交互に出してバランスを取りながら歩く
多くの人が普段当たり前にやっている「移動」ですが、実は複雑な動作が必要であることがお分かりいただけると思います。
老化や何らかの疾患などが理由でこうしたひとつひとつの動作が難しくなると、誰かの手を借りる「介助」が必要になるわけです。
そこで福祉用具が重要な役割を果たします。
福祉用具とは?
自分自身に残っている機能を最大限に活用することに加え、低下した機能を補うことで、人の手を借りることなく自立した生活を目指すのが福祉用具です。
福祉用具は、何らかの障害を持ってしまった方々が、これからも自立した生活を送るうえで極めて有効な手段であり、在宅生活を継続する上でも必要不可欠なサービスと言えます。
福祉用具貸与サービスとは?
介護保険制度における福祉用具を利用できる代表的なサービスとして「福祉用具貸与(レンタル)」があります。
要支援や要介護の認定を受けている方が利用できるサービスであり、その方の生活における動作支障に応じた介護用品が低額でレンタル出来ます。
対象となる13品目は下記の表をご参照ください。
介護度 | 品 目 |
要介護2以上 | 車椅子 車椅子付属品 特殊寝台(介護用ベッド) 特殊寝台付属品 床ずれ防止用具(エアマット) 体位交換器 手すり スロープ 歩行器 歩行補助杖 認知症老人徘徊感知器 移動用リフト 自動排泄処理装置 |
要支援1・2 要介護1 | 手すり 歩行器 歩行補助杖 スロープ 自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引する機能のもの) ※ 特殊寝台、車椅子等、原則的に給付が認められませんが、様々な疾患によって厚生労働省が示した状態像に該当する方については例外的に給付が認められています。 |
レンタル品であるため他の方が使用後に修繕・クリーニングを経て再利用されるものであることから、ポータブルトイレやシャワーチェアなどの排泄・入浴に関わるものはレンタルに該当せず、購入対象となり、用途によって区別されています。
これら商品を取り扱う事業者は、介護保険事業者として自治体から指定を受ける必要があり、用具の点検・調整・交換または相談などの対応をしてくれます。
近年では、ひとつの動作補助を目的とした福祉用具であっても高機能化しており、軽量化やコンパクト化など、利用する方の状態や居住環境に合わせて対応できる製品が続々登場しています。
サービス利用までの流れ
動作支障を改善したいと感じた時は、まずは、お近くの地域包括支援センターや居宅介護支援事業所のケアマネージャーに相談するのがよろしいかと思います。
介護の専門家であるケアマネージャーがご本人の疾病、お体の状態、居住環境等を総合的に分析し、動作の支障を改善するためにどの様な用具が適しているのかをアドバイスします。
この提案をもとに事業者を選定し、福祉用具の専門家である「福祉用具専門相談員」との面談の場を設けてヒアリングをします。近年では直ぐに契約・使用するのではなく一定期間(一週間程度)、お試し利用をして使い勝手が良いか、効果があるのかを確認するのが一般的となっています。これらの経過を経て、正式に利用を決定する流れとなっています。
福祉用具の使用に当たって【注意点】【使用例】
自立の阻害になる場合も・・・
福祉用具、とりわけレンタル品は低額で福祉用具が使用できること、必要性が無くなった場合に返却ができるサービスであるため、大変便利なものです。
しかし、自立支援の考え方からすると、この便利さや手軽さが自立を阻害する危険も潜んでいます。便利が過ぎると逆に体力や機能が低下する恐れがあるからです。
福祉用具の選定・使用にあたっては、「果たして自身の生活に必要であるのか」「動作自立の効果があるのか」さらに突き詰めていけば「どのような生活を送っていきたいのか」まで考える必要があります。
手すりの設置で外出可能に
これまで在宅支援を行った例のひとつに、何とか杖を使えば歩けるが、家から外に出れないという方がいました。調べてみると玄関や庭に段差があることが原因で外出できないことが分かりました。
元気な方には分かりにくいと思いますが、ちょっとした段差でも歩行に支障がある方にとっては大きな壁になり、生活の質を著しく低下させてしまいます。
この段差に福祉用具である手すりを設置すると、「掴む(つかむ)」という動作が新たに加わり、それによって屋外への外出が可能となり、近所の方との交流も再開出来ました。
このように、福祉用具をうまく活用すればできなかったことができるようになります。
この方の場合は、外出できたということにとどまらず、近所の方との交流も再開でき、生活の質が大きく向上したことが分かりますね。
人の手による「介助」は、なかなか自分の思うようには得られないのが現実にありますが、福祉用具は自身の力を補助する力を持っています。興味のある方、もっと詳しく知りたい方は、まずはお近くの地域包括支援センターや居宅介護支援事業所にご相談ください。
【当法人が仙台市より委託を受けている地域包括支援センター】
〒989-3204仙台市青葉区南吉成7-14-1
Tel:022-719-5733(Fax兼)
E-mail:m.houkatsu@oishigaharakai.or.jp
【当法人が運営する居宅介護支援事業所】
〒989-3204仙台市青葉区南吉成7-14-1
TEL:022-303-3077(Fax兼)
〒981-3111仙台市泉区松森字岡本前27
TEL:022-771-8085
Fax:022-773-1058