- 「同じ事を何度も聞かされる」
- 「さっき伝えたばかりなのに、また同じ事を聞いてくる」
- 「なかなか会話が成立しない」
などなど、介護に携わっている多くの方が、経験されている思います。
このようなことが続くと疲れるし、イライラすることもありますよね?
大切な人とのコミュニケーション、じっくり聞いてあげたいけど…と感じていませんか?
今回は介護場面だけでなく、あらゆる場面で重要な「傾聴」を取り上げます。
「傾聴」が重要であることくらいご存知の方も多いと思いますが、なぜ重要なのかを改めて知っていただき、日々の介護の参考にしていただけるとありがたいです。
介護におけるコミュニケーション
介護を行う上で、利用者(対象者)との信頼関係を構築することは大切なことであり、その関係性により介護の質も大きな影響を受けます。介護は利用者と介護者の人間関係を基盤に展開される「支援行為」に他ならず、そしてその人間関係の基盤となるのが、意思・感情や情報を伝達し合うこと、伝えられたことを理解しようとする「コミュニケーション」で、これは介護者が備えるべき基本的スキルのひとつと言えるでしょう。
「傾聴」は円滑なコミュニケーションを図るうえで有効な技法です。これまでの記事でも認知症の方への接し方、関わり方についても何度か触れてきましたが、「傾聴」は特に認知症の高齢者の方との信頼関係を構築するにあたり、必須とも言える対応です。
共感を示すコミュニケーション技術「傾聴」
傾聴とは?
- おしゃべり
- 話し合い
- 議論
- 討論
これらは全て、コミュニケーションに関わる言葉ですが、情報交換や物事を決めること、意見を通すことなど、目的ごとに分かれています。今回取り上げる「傾聴」は、これらと意味合いが少し異なります。
傾聴を簡単に言うと、本人の話に対して異論、反論や批判をせずに、あるがままの話を聞くことです。「意見を挟まず」「話を肯定」し、聴くことに徹することが普通の会話との大きな違いです。
これは介護の世界に限らず、どの業界でも活用できるテクニックで、傾聴を行うメリットとして相手の心が安らぎ、心の距離も縮まることで信頼関係が深まる効果があります。介護の現場でもこのスキルを身に付けておけば、スムーズなケアが可能となるほか、良好なチームワークを形成できることも多いので、取り入れてみましょう。
『聴』の意味
- 聞く
- 訊く
- 聴く
これら「きく」という言葉にも様々な漢字が当てはめられています。同じ「きく」にしても微妙に意味が異なっています。今回取り上げたテーマの傾聴には『聴』という文字が当てられていますが、これはどういった意味があるのでしょうか。
「聴く」には相手の話を積極的に、熱心に「きく」という意味があります。相手の話を受け止め、共感し、受容する。つまり、単純に話を聞いて内容を理解するのではなく、相手の気持ちに寄り添って、尊重することが大切だということになります。
傾聴のポイント
話す側は、喋る言葉に自分の気持ちを乗せて語ります。それをありのままに受け止めてみてください。途中で口を挟んだり、批判や否定はせず、まずは話を聴くことが重要です。話を聴くことに集中しましょう。また相手の話にうなづいたり、相づちを打ったり、時には驚く反応を見せることも自分の話をしっかり聞いてもらえているという実感を与えます。こうした真摯に聴こうとする姿勢は、相手に安心感を与え、より多くの言葉を引き出すので、声のトーンや表情にも気を配ることが大切です。
相手の話を聴く態度でとても大事なのは「共感」です。いくら喋っても無関心な態度や返事をされてしまえば話をしようとする気は失せてしまいます。自分の話を遮ったり、否定するような人と話したくなくなるのは当たり前のことです。人間だれしも「話を聞いて欲しい」「理解して認めてほしい」という承認欲求を持っています。
信頼関係を築くには、「喋る」能力も重要ですが、それ以上に「聴く」能力が求められます。何らかの病が原因となり、言葉を発せなかったり、耳が聞こえ辛くなったりした方の対応でも同様です。時に、「筆談」という手法を活用することも介護の現場では見られます。こうした会話や文字による言語的コミュニケーションに加え、表情やジェスチャー、距離感などの言葉以外の非言語コミュニケーションの手段を交えながら聴くことで、さらにスムーズなコミュニケーションが可能になります。
おわりに
認知症の方の介護を行うには介護する側、される側の双方に大変な負担とストレスが発生します。食事や排泄、入浴などの介護だけでも沢山の時間を取られてしまうため、話をする余裕なんて無いという声もよく聞きますし、実際に大変な毎日だと思います。
ここで、少しだけ考え方を変えてみませんか?
傾聴は「聴く」だけでも心のケアとなる優れたコミュニケーションです。
大切な人ともコミュニケーションで傾聴する時間を少しでも取り入れてみませんか?
短時間の会話でも相手に安心感を与え、関係性が良くなることが期待できます。