朝ごはんのときは自分で歩いて食卓に来られたのに、夕方になると足が床に貼りついたように前へ出ない。お父さまの手を引きながら、「さっきはできたのに」と、つい言ってしまいそうになる――。
パーキンソン病の親御さんを支えるご家族の多くが、こうした毎日の揺れに戸惑っています。
パーキンソン病とは?
「パーキンソン病」は、体の動きをなめらかに調整する脳の働きが少しずつ弱まっていく病気です。
脳の中で、体を動かす指令を伝える「ドパミン」という物質をつくる神経細胞が減っていくことで、手足がふるえる、動きがゆっくりになる、といった症状が表れます。
年齢を重ねるほど発症する方が増えるとされ、高齢の方に多い神経の病気のひとつです。症状はゆっくり進むことが多く、お薬やリハビリを続けながら長く暮らしていく方もたくさんいらっしゃいます。一方で、進み方や症状の出方は一人ひとり大きく異なります。
パーキンソン病の主な症状
【体の動きに表れる症状】
- じっとしているときに、手や足がふるえる
- 動き出しに時間がかかる、動作がゆっくりになる
- 筋肉がこわばり、手足や体がかたくなる
- 体のバランスがとりにくく、転びやすくなる
- 歩幅が小さくなる、足が床に貼りついたように出なくなる(すくみ足)
【動き以外に表れる症状】
- 便秘が続く
- 眠りが浅い、寝ている間に大きな声を出したり手足を動かしたりする
- 気分が落ち込む、何をするにも意欲がわかない
- 立ち上がったときにふらつく
- 表情が乏しくなる、声が小さくなる
動き以外の症状は、パーキンソン病と結びつけて考えられにくく、「年のせい」「性格が変わった」と受け取られてしまうこともあります。難病情報センターでも、便秘や立ちくらみ、気分の落ち込み、意欲の低下などが「非運動症状」として紹介されています。気になる変化があれば、主治医や脳神経内科などの医療機関に相談してください。診断や治療方針は、医師の判断に従いましょう。
参考:パーキンソン病(指定難病6)(難病情報センター)
「お薬の時間」と体調の波
パーキンソン病の介護で、ご家族が戸惑いやすいのが一日の中での体調の波です。朝はスムーズに歩けていたのに、夕方には思うように動けない――。こうした変化は、お薬の効いている時間と関係していることがあります。
「さっきはできたのに、どうして今はできないの?」と感じることもあるかもしれません。でもそれは、ご本人の怠けや甘えとは限らず、病気の特徴やお薬の効き方が関係していることがあります。お薬は決められた時間に飲むことが大切とされていますので、飲み忘れがないよう一緒に確認してあげてください。
また、「どの時間帯に動きにくくなるか」「ふるえが強くなるのはいつか」などをメモしておくと、受診の際に医師へ様子を伝えやすくなります。お薬の量や飲む時間を自己判断で変えることは避け、気になることは主治医に相談しましょう。
家族ができる暮らしの工夫
転びにくい住まいに整える
パーキンソン病の方にとって、転倒はとても心配なことのひとつです。床に置いた物や電気コード、めくれやすいマットを片づける、廊下やトイレに手すりをつける、夜間の足元を明るくするなど、つまずきの原因を減らす工夫をしてみましょう。ベッドや椅子からの立ち上がりを手伝うときは、高齢者の「移乗の方法」も参考にしてください。
すくみ足には「リズム」と「目印」
足が出なくなったときに、後ろから急かしたり手を強く引いたりすると、かえってバランスを崩すことがあります。「いち、に、いち、に」とリズムをとって声をかける、床に目印のテープを貼ってまたいでもらうなど、ご本人が一歩を踏み出しやすいきっかけをつくる方法があります。どの方法が合うかは人それぞれなので、リハビリの専門職に相談してみるのもおすすめです。
食事のときの「むせ」に気をつける
病気が進むと、飲み込む力が弱まり、食事中にむせやすくなることがあります。食べ物が気管に入る「誤嚥」は、肺炎につながるおそれもあるため注意が必要です。姿勢を整えてから食べる、ひと口の量を少なめにする、急かさずゆっくり食べてもらうといった工夫については、高齢者の食事で気をつけたい誤嚥とその対処で詳しく紹介しています。
「できること」は、時間がかかっても任せる
動作がゆっくりになると、つい先回りして手伝いたくなります。けれども、時間がかかってもご本人ができることは任せ、見守ることが、体を動かす機会や自信を保つことにつながります。手伝うときは「何を手伝ってほしいか」を本人に聞いてみましょう。
利用できる制度や相談先
パーキンソン病は国の「指定難病」のひとつで、症状の程度などによって公的な医療費の助成の対象になる場合があります。対象になるかどうかや手続きについては、主治医やお住まいの自治体の窓口に確認してみてください。また、介護保険のサービスを使って、リハビリや入浴の手伝い、福祉用具の利用などを検討することもできます。ケアマネジャーや地域包括支援センターも身近な相談先です。
まとめ/長く付き合う病気だからこそ、支え手を増やす
パーキンソン病は、長い時間をかけて付き合っていくことの多い病気です。お薬の管理、転倒やむせへの気配り、夜間の見守り――。ご家族だけで抱え続けると、介護する側の心と体が先に疲れてしまうこともあります。
「お薬の時間に合わせて動きを手伝えるのは、自分しかいない」と感じているなら、支え手を増やす相談をしてみませんか。仙台市青葉区の大石原苑介護支援センター・南吉成地域包括支援センター(社会福祉法人大石ケ原会)では、リハビリや入浴の手伝い、手すりなどの福祉用具、介護保険の使い方まで、介護のことをご家族からご相談いただけます。体調の波をメモしたノートがあれば、それを持って話すだけでも、使えるサービスが見えてきます。
